「経験は最良の教師」は正しいか

そしてあなたは、Think Biggerにこんな疑問を持っているかもしれない。「他人の経験よりも、自分の経験から学ぶのが一番なのでは? 経験は最良の教師と言うじゃないか?」と。

では、もう一度森の例に戻ろう。ただし、今度は本をもらえない。自分の経験から学ぶしかない。あなたは以前食べたようなキノコを見つけ、食べてみる。すると猛烈に具合が悪くなった。

この「経験」から学べることは何だろう? 「そのキノコは食べるな!」だ。そこで別の種類のキノコを食べてみる。また気分が悪くなった。そうやって森中のキノコで試行錯誤をくり返す。

するとその時、あなたは別の出場者に出会う。彼女はあなたの3週間も前から森にいて、22種類のキノコを試した末に、とうとう食べられるものを探し当てたという。

さて、あなたはそのキノコを教えてほしいと懇願するだろうか、それとも「大丈夫、『自分の経験』から学ぶから」と言うだろうか?

地面から生えたキノコ
写真=iStock.com/TOLGA DOGAN
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他人から学ぶほうが速くて安全

経験は最良の教師かもしれないが、一番時間のかかる教師でもある。仲間の出場者から学ぶ方が、食べられるキノコにめぐり会うまで何十種類ものキノコを試し続けるよりずっと早いし、安全だ。

ロイド・トロッターは、たとえ管轄の全工場を数十年自分で運営したとしても、経験を積んだ工場長たちから教わったことのほんの一部分しか学べなかっただろう。またピカソは画家として熟達するために長年努力を重ねたが、アイデア豊富な多くの画家に囲まれていた。

彼はほかの芸術家、とくにアフリカの彫刻家のアイデアを借用することによって、飛躍的な革新を遂げた。何年もの経験を重ねてアフリカ美術の技巧を身につける代わりに、アフリカの芸術家を模倣したわけだ。

あなたもThink Biggerの探索で、たくさんのキノコに出くわすだろう。だが選択マップに書いていいのは、食用キノコだけだ。