意欲の低下は40代から始まる人も

これまでに私が書いた本で何度も主張していることですが、高齢者の老化を遅らせるためにもっとも重要なことは、意欲の低下を遅らせるということです。

では意欲の低下はどうして起こるのかというと、脳の老化が原因です。

脳の老化というと、記憶力の低下を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、記憶をつかさどる脳の海馬という部位が目立って萎縮し始めるのは、だいたい70代からです。

これに対し、意欲をつかさどる脳の前頭葉は40代ぐらいから萎縮が目立ち始めます。

若い頃、いろんなことに対して意欲がある人が、中年になるとだんだん意欲がなくなってくるのは、前頭葉が萎縮し始めたからかもしれません。

そして、意欲に対し、もっとも大きな影響を与えているのが外見です。

先ほど男性は定年退職、女性はママ友とのつきあいがなくなった頃から、外見に気をつかわなくなり、意欲が低下すると言いましたが、そのまま年齢を重ねていくにつれて、見た目年齢はどんどん老けていくと思います。

いつまでも若く見られたいという意欲が保てている人は、外見に気をつかうだけでなく、体や頭を積極的に使って、老けないように努力するでしょう。

逆に、若く見られたいという意欲を失った人は、見た目だけでなく全身の老化も進んでいくのです。

PCを見ながら体操をするシニア女性
写真=iStock.com/petesphotography
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「俺はもう65歳で高齢者だから」は言ってはいけない

さらにもう1つ、若く見られたいという意欲を失わせる要素に、年齢にまつわるバイアスがあるような気がします。

バイアスとは偏見や先入観などを意味します。

私たちは「50代はおじさん、おばさん」「60代はお爺さん、お婆さん」「70代や80代はヨボヨボのお爺さん、シワシワのお婆さん」といったバイアスに支配されています。

他人の外見だけではありません。自分自身に対しても、年齢バイアスにとらわれているので、「俺はもう65歳で高齢者だから」とか「私はもう50代のおばさんだから」と、若く見られることをあきらめてしまうのです。

見た目年齢が実年齢よりも老けて見える人には、このような心理が働いているのではないかと思います。