いきなり上司に転職の質問をする若手社員

ある会社で新入社員の面白い話を耳にしました。

なんと入社したての新入社員が、社内で平然と転職の話題を持ち出しているというのです。それは休憩中に新入社員同士がこっそり転職の話をしていたというのではありません。2年目、3年目の年の近い先輩に話したというのでもありません。課長や部長といった配属先の管理職と営業の同行をしている最中やランチタイムに堂々と転職について質問してくるそうです。

「課長は転職についてどのようにお考えでしょうか?」
「部長は転職することをどう思われますか?」

こうした事態に「彼らはいったい何を考えているのか?」「その質問にどう答えたらいいのか?」と管理職の方々は一様にうろたえてしまったそうです。たしかにちょっと想像すれば、入社早々の社員に転職を積極的に推奨する上司はほとんどいませんし、仮にいずれ自分も転職する意志があっても新人に明言する上司もいないことぐらいわかりそうなものです。そこをあえて聞いてくるのですから、若手の意図がつかめないのも無理はありません。

背を向ける男性のイメージ
写真=iStock.com/mapo
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辞めたいのではなく、情報が欲しいだけ

じつは、私も同じような経験をしたことがあります。入社直後の新入社員研修で、参加者から「先生は転職についてどう思いますか?」と質問されたのです。

この新入社員研修の参加者は、入社後わずか3日でした。しかも、その場には採用した人事担当者も同席していましたし、配属前ではありますが複数の部門の部長や課長も顔を出している場での出来事です。さすがに全員が目を丸くして「講師はいったい何と答えるのか?」と一斉に私に向けて視線が集中したのが印象的でした。

私は焦りも緊迫感もなく平然と答えました。

「みなさんもご存じの通り、今や終身雇用が崩壊したと言われています。したがって、転職の可能性は普通に誰にでもあり得るでしょう。一方で、キャリアには専門性も欠かせません。ですから、1つの分野を継続することも大切だと思います」

すると、その新入社員は「わかりました。貴重なご意見をありがとうございます」と納得した表情で答えていました。この若手の発言が良いか悪いかというより、これが今の若手社員のフィーリングなのです。彼らは単なる情報収集の一環として、まるで検索サイトで情報を得るのと同じような感覚でただ知りたい転職のことを質問しただけです。周囲の人が感じた焦りや緊迫感などは本人たちにはいっさいなく、極めてドライな感覚で聞いています。