動かなくても情報が手に入るのが当たり前

若手社員が「動けない」ことには、明確な理由があります。

彼らが生まれた2000年前後からインターネットが急速に発達し、2010年以降はスマホが一気に普及しました。今や生活するうえでの情報の多くはスマホを使って検索します。電車やバスの中でも今日のニュースをチェックしたり、仕事や趣味に関する調べ物をしたり、他人の日常をSNSで確認したりするなど、それらすべてでスマホを使って行います。そこには膨大な情報があり、検索すると答えが見つかるのです。

スマートフォンを使うイメージ
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

上司世代は大学生や社会人になるまでネットもスマホもないアナログ時代を経験してきた人も多いですが、最近の若手社員は異なる環境で育ってきたのです。彼らは、相手の都合に気を揉みながら家の固定電話から連絡をしたり、時刻表や地図を手に旅行の行程を調べたり、1つの言葉の意味を調べるのに辞書を行ったり来たりした経験をせずに育ったのです。こうした背景を踏まえると、単純に今の若手を「自分から動かない」と批判できるでしょうか。

まず、最近の若手社員は「自分から動けない」のだと受けとめること。「自分から考えたり、動いたりする経験をしてこなかった」と思いを及ぼすと、若い世代が少々気の毒に思えてきます。そして、寄り添ってあげたい気持ちが湧き上がってきます。

「自分から動く」ことの意味を教えてあげるべき

スマホの情報も有益で便利ではありますが、それだけに頼らずに自分の頭で考えること、自分の意志で動くことの必要性と大切さを教えようという意識も芽生えてきます。

こちらが支援する気持ちで歩み寄ると、素直さを持って耳を傾けてくるというのも今の若手社員の特徴です。したがって、上司は「与えられた情報だけでは仕事で一人前になれないこと」「自分で周囲の状況や相手の感情を読み取って、言われなくとも行動する必要があること」それ自体から教えてあげるのです。

もし、若手に「それ(言われなくとも行動する必要があるとき)って具体的にどんなときですか?」と質問されたら、仕事で起こり得ることを1つひとつ教えてあげるのです。そのうえで、若手の成長のタイミングを見て「自分から動く」という本来の意味が理解できたかどうかを確認していきます。そうすれば、指示出し上司と指示待ち部下の関係には陥りません。

時に、「そんなことまで教えないといけないのか」と上司や先輩は思うかもしれません。しかし、「最近の若手は自ら動かない」と不満を抱えたまま時間をすごすより、「そんなこと」から教えてしまったほうが早いのです。

【POINT】
ネット検索で育った世代には、「自分から動く必要性」そのものから教える