縁故採用しかないのであれば知り合いを作ればいい

かつて、岩波書店が採用試験を受ける条件に、「岩波書店の著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」を挙げていたことが問題となりました。日頃から差別を糾弾しておきながら、自分たちは縁故採用しかしていないことを厳しく指摘されたのです。

出版社は有名なところでも規模は小さく、新規採用などあったとしてもほんの数名です。コストをかけて大々的に募集し、採用した数名が会社のカラーに合わないというリスクを避けるために、確実なところを狙いたかったのかもしれません。ただ、本当に岩波書店に行きたいのなら、「岩波書店の著者や岩波書店の社員」と顔見知りではないからといって諦めてしまうことはありません。なぜなら、顔見知りになればいいのですから。

いろいろつてをたどり著者を紹介してもらってもいいし、岩波書店のビルの前に毎日立って社員と知り合いになることだってできるでしょう。そうやって、知り合いになってしまえば、ほかの人たちが諦めてしまって倍率が低くなっている分、かなり優位に立てます。誰でもできる簡単なことなのに、やらない人がほとんどです。ほとんどの人がやらないからこそ、やった人にとっては立派な抜け道となる。つまり、サードドアが開くのです。

僕の知人の成功者は、中卒をウリにしています。中卒だと言うと相手が食いついてくれるそうで、東大卒よりはるかに強い武器となっているようです。このように、種類は違うけれど、誰にでも抜け道はあるのです。たいていの成功者は、VIP用から入ってきてはいません。みんなサードドアをこじ開けています。そして、それは特別に難しいことではありません。

地位や肩書に関心がない若者たち

人材育成に関わる企業ラーニングエージェンシーが、学生たちを対象に行った調査では、将来会社で担いたい役割について、「専門性を極め、プロフェッショナルとしての道を進みたい」という答えが31.6%を占めています。一方、「組織を率いるリーダーになり、マネジメントを行いたい」という答えは、過去最低の23.5%に留まりました。

日本のビジネス オフィス、日本中握手。
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今の学生たちは、マネジャーや部長などという地位や肩書きには興味がなく、自分の特性が生かせることを望んでいるのがわかります。さらに、産労総合研究所が企業の採用担当者に行ったアンケートでは、そうした傾向を裏付ける結果が出ています。配属(職種・勤務地)に関心がある学生の増減について問うたところ、「増加」が20%、「やや増加」が40%となっているのです。

たしかに、専門的なスキルを身につけるとなれば、就職した会社でどの部署に配属されるかは重要な問題です。そこで、内定をもらうやいなやOBやOGを訪ねてアピールするなど「配活」を行う学生も増えているそうです。しかし、欧米で主流のジョブ型採用と違って、「総合職」として採用する日本の新卒一括採用では、配属は入社ギリギリに決まるのが普通です。