完全自動運転化の実現までにタクシー業界ができること

2023年8月末、私は機会を得て自動運転の最先端をゆく北米で自動運転タクシーに試乗しました。そこでは大変スムーズな運転技術による驚くべき乗車体験をすることができ、それまでは日本での実装にはあと数十年かかるとみていた私自身の考えが大幅にアップデートされ、現在ではおよそ3~5年ではと予想しています。

自動運転が特に難しいと考えられる東京の市街地での走行も、一部の細い道等を除けば半年ほど試験走行してAIラーニングさせれば、「技術的には可能、むしろ東京は人も車も交通法規をきちんと守るので比較的簡単」との自信満々なエンジニアの表情が印象的でした。

2023年8月末、自動運転の最先端をゆく北米で自動運転タクシーに試乗してきた
写真=筆者提供

もちろん自動運転車両による事故も発生しており、安全性最優先のさらなる技術革新が求められます。ですが、自動運転タクシーはもう夢物語ではなくすぐそこの未来にあります。その未来に向かう中で、公共交通機関としてタクシーが取り組める余白はまだまだあり、それが移動の課題を解消する最速の近道だと考えます。

最後に、われわれ全国ハイヤー・タクシー連合会の定款には「我が国における一般乗用旅客自動車運送事業の適正な運営と利用者に対するサ-ビスの改善を通じて事業の健全な発展を図り、もって社会公共の福祉に寄与する」とあります。

われわれタクシー業界は失敗の度にこの本質に常に立ち返りながら111年にわたり発展してきました。これだけ知見の詰まった歴史に学ばない手はありません。隣の芝生に目を奪われるのではなく、すでに緩和が進むタクシーの規制やそれぞれのエリアごとの課題に応じた取り組みの加速によってもたらされるタクシー移動の進化にぜひご期待いただきたいと思います。

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