「タクシー不足」は地域別データで検証を

タクシーの供給課題を考える際は、「都市部」「観光地」「地方/過疎地」と地域種別ごとの「3つの類型」別にみることが重要です。それぞれ全く異なる条件・状況下にあるので地域特性に分けて考えること、そして個人の主観や経験、目立つ現象にフォーカスするのではなく、客観的データに基づき論理的に検証することが課題解決の糸口となります。

一例として、「都市部」でのタクシーアプリの利用リクエストに対し、どれだけマッチングが成立したか(マッチング率)を示したデータがあります(図表2)。

【図表】【都市部】タクシーアプリ配車依頼とマッチング率の傾向
筆者作成

平均的なマッチング率に対し明らかに下落している箇所を仮に供給不足とすると、発生しているのは月に数回程度となります。またよく「タクシーが来ない」と言われる台風の日に絞ってみても、不足している時間帯は限定的なことが分かります。

また東京23区のマッチング率をヒートマップにしたところ、ターミナル駅周辺や駅から離れた住宅街、タクシーの営業所が少ない地価の高いエリアなど、率が低く供給不足と推察できる地域は限られています。

【図表】【都市部】タクシーアプリ配車依頼とマッチング率の傾向
筆者作成
【図表】【都市部】タクシーマッチング率ヒートマップ(東京23区10月平均実績)
筆者作成

このようにエリアや時間帯ごとのデータを基に需要と供給の状況を検証することが重要です。

都市部のタクシー不足は1年で解消できる

東京では2022年11月、大阪では2023年5月から、神奈川ではこの11月から運賃を改定し、賃上げにつながったことから乗務員の増加ペースが上がっています。

また東京都内ではアプリ配車専用で短時間勤務が可能なパートタイム乗務員の採用が進んでおり、女性や学生など50名以上が活躍中です。

「タクシーの規制緩和」に加えてこうした賃金増や新たな就労形態・人材採用の取り組みなど複数の要件を掛け合わせることにより「都市部」における乗務員不足の解消は、約1年で達成できる見込みです。

【図表】都市部におけるタクシー不足の解消は、1年で達成できる
筆者作成