ハイシーズンを迎えた観光地への「援軍」が可能に

次に「観光地」においては、ハイシーズンは供給不足の傾向がありますが、オフシーズンは供給不足とは言えません。

インバウンド観光客の「タクシー・ハイヤー」利用率は24.6%(※1)であり、これには貸切ハイヤーも含まれます。政府目標である3000万人(2025年時点)のインバウンドによる推定タクシー利用回数は約1181万回/年となり、6000万人(2030年時点)に到達したとしても日本のタクシーの全需要約10億回/年(※2)の数%程度の範囲に収まる見込みです。また訪日外国人旅行者の8割が訪問先上位10都道府県に集中(※3)することからも、対策は地域個別の状況を見て検討すべきと考えます。

※1 訪日外国人消費動向調査 2019(観光庁) 費目別購入率および購入者単価より算出および試算
※2 国土交通省(運輸局)タクシー輸送実績より
※3 観光立国推進基本計画(観光庁)より

【図表】【観光地】タクシーアプリ配車依頼とマッチング率の傾向
筆者作成

また、タクシーの区域外営業は通常は禁止されていますが、冬場に多くの外国人観光客が訪れる北海道のニセコでは、今年12月から東京と札幌からのタクシー車両10台と乗務員25名の援軍を送ることができるように規制緩和されました。これは、「ニセコモデル」と呼ばれ、需要が高まる時期に実質のタクシー供給量を2倍に拡充することができます。

このモデルの優れた点は、需要期のみに絞って他地域からタクシーを投入できることと、自治体などの協力が得られれば、ニセコ以外の他の観光地にも横展開が可能であることです。他観光地にも展開していくことで、ハイシーズンに限定した効率的な供給対応が可能となります。

ここに、先述した在日外国人の乗務員増加が加わることで「観光地」のタクシー不足はおよそ2年で解消できる見込みです。

5台以上必要だったタクシー営業所も1台から設置可能に

「地方/過疎地」においては、バスと異なりタクシーには赤字補填がなく独立採算性が問われます。一方で、「最低車両数5台で専用の施設が必要」という営業所の設置要件により、実際は5台分を下回る需要しかない状況下では経営判断として撤退を余儀なくされてきたという構造的問題がありました。この点は、タクシー業界以外にはほとんど知られていません。

雪をかぶったタクシー
写真=iStock.com/Stormcab
※写真はイメージです

それがこの11月より設置条件の車両台数が最低1台へ、そして併用施設でも可能と緩和され、ハードルが低くなっています。これにより、タクシー空白地や撤退を余儀なくされていた地域で「ミニ営業所」が増えると考えています。なお、すでに全国4900コースで1.5万台の乗り合いタクシーが運行しており、特にデマンド型の運行は今後も地域住民の生活交通を維持する手段として活用される見込みです。

「タクシーの規制緩和」とこれらが広がれば全国の「地方/過疎地」は3年で解消できると見込んでいます。

【図表】地方/過疎地におけるタクシー不足の解消は、3年で達成できる
筆者作成

さらに国土交通省では、過疎地など交通空白地向けに例外的に認めている「自家用有償旅客運送」の適用拡大に軸足を置いていると聞いていますので、この3年の間にも現地の不足は徐々に解消されていくでしょう。