ライドシェアの解禁よりもタクシーの規制緩和が先決

私たちが「移動の足を増やす」ために要望している規制緩和には、以下のようなものがあります。

例えば、二種免許取得までの日数。私のいる日本交通グループの場合では、一人の乗務員が誕生するまでに最短でも約25日間かかっています。これを全体的に短縮させる方向で業界団体として関係省庁に働きかけています。

具体的には、教習所での1日の講習時間の上限を増やしたりすることで日数短縮ができます。また合格率が6~7割で難解といわれる「地理試験」は、アプリ利用が増えナビもある現代には合わない試験として廃止を求めています。

さらには、日本語でしか受験できない二種免許試験の多言語化が実現すれば、日常会話は問題ない外国人の方でも日本語の筆記試験がハードルになりやすいという課題を解決できます。外国人の在留資格における「特定技能1号」の対象分野への追加も検討が進んでおり、182万人いるといわれる外国人労働者から多くの担い手増加が期待できます。

日本語と外国語が話せるドライバーが増えることで、タクシー不足の解消に資するだけでなく、外国人のお客様に対するサービス向上にもつながります。

これらの改定が実現されれば約50年ぶりの出来事です。時代に合わせた更新は必然と言えるでしょう。

こうした「タクシーの規制緩和」を網羅的に加速させ全国的に展開することで、いまのタクシーの供給不足の課題は、都市部では1年、観光地では2年、地方/過疎地では3年で解消する見込みです。

責任の所在が不明確なままライドシェアの解禁は危険

他方「ライドシェア」については国会その他の場で議論が繰り広げられている最中ではありますが、現時点で言えるのは、日本社会の実相に即した検証が大幅に足りていない中で、手段先行で性急に進めようとしているということです。

一部で具体案も提出されてはいますが、目先の「供給不足」や「利便性」ばかりが優先され、人の命に関わる安全性については海外の事例を焼き直した小手先の対応案が目立ちます。

そもそも海外の事例は、実際に重大な事故が起こったら、あるいはそもそも事故を起こさないために、誰がどのように責任を取るのかという最も肝となる部分が曖昧なものが多いのです。

また雇用問題に関してはほとんど議論もありません。海外の事例に倣えば労働者として保護されないままワーキングプアを大量発生させかねない副作用の検証や、安全にもつながる乗務員の労務管理に関する議論も不足しています。