二酸化炭素の次は、メタンガスを標的にするEU
ロイター通信が伝えたところによると、欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会は、EUに天然ガスを輸出する域外の企業に対して、2030年からメタン排出量の上限を課すことを提案しているようだ。
詳細は不明だが、基準を超過した企業からの天然ガスの輸入を停止するか、あるいは一定の輸入関税をかけることになるとみられる。
メタンは天然ガスの主成分で、そのおおよそ9割を構成する物質である。メタンを主成分とする天然ガスを燃料として用いた場合、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量が、他の化石燃料に比べるとかなり少なくて済む。
したがって、メタンを主成分とする天然ガスの利用は、温暖化対策の観点から、非常に重視されているのである。
他方で、メタンそのものは温室効果ガスとしての側面を持っている。米環境保護庁によると、メタンの地球温暖化係数(CO2を基準として他の温室効果ガスが持つ温暖化効果を示したもの)は100年間で27~30倍と推定されている。
また産業革命前からの世界平均気温の1度上昇のうち、メタンガス排出量は要因の半分を占めているともいわれる。
メタンの寿命は10年ほどにすぎない
そうはいっても、メタンの寿命は10年ほどであり、1000年が経過してもその20%が残り続けるとされるCO2に比べると、かなり短い。
対流圏(地表から10~16kmまでの大気の層)における光化学反応で分解されるためであるが、要するにメタンは、CO2に比べると、強い温室効果を持つ一方で寿命が短いという特性を持つ温室効果ガスである。
温室効果ガスに占めるメタンの割合は2割に満たないが、短期間のうちに消滅するメタンの特性に鑑みれば、その削減を進めることで、温室効果ガス全体の排出量が大いに抑制されると期待される。
そのため、温暖化対策を重視するEUは、EU域内の企業のみならず、域外の企業に対してもメタンの削減を呼びかけているという経緯がある。