COP28で存在感を示したいEUの思惑
すでに欧州委員会は、2021年に、EU域内の企業にメタンの排出削減を義務化する法案を提出している。
この法案は現在、今年11月30日にドバイで開催される国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)までの合意を目指し、EUの立法府である欧州議会とEU各国との間で、協議が進められているところである。
欧州委員会には、まずはEU域内の企業にメタンの排出削減を義務化し、COP28で存在感を示したうえで、温暖化対策のけん引役として世界的なメタンの削減のイニシアチブを握りたいという思惑があるようだ。
いかにもEUらしいことの運び方といえるが、このメタン削減の動きが本当にEUの思い通りに進んでいくかは、良く分からない。
EUに天然ガスを輸出する域外企業への規制に話を戻すと、このメタン排出量の規制が導入された場合、EUへの最大のガス供給国であるノルウェーの企業は、それほど影響を被らないようだ(図表1)。
これは同国のメタン排出量がそれほど多くないためだが、一方で米国とアルジェリアのガス輸出企業は、その影響を強く被ることになる。
規制の影響を受けるのは米国企業
特に米国は、主力のシェールガス(頁岩層から産出される天然ガス)が大量のメタンを放散するため、このEUの規制を強く受けることになる。
EUの規制に対応してメタンの放散を防ぐためには、パイプラインや貯蔵施設の改修・新設など、莫大な設備投資が必要となる。当然、時間も労力も必要となるが、これを誰かが負担する必要がある。
米政府は今のところ、欧州委員会と歩調を合わせている。
2021年のCOP26の場でバイデン政権は、米国とEUの共同で「グローバル・メタン・プレッジ」(メタンの排出量を2030年までに2020年対比で30%減らす目標)を発表、翌年のCOP27でも「米国メタン排出削減行動計画」を発表し、国内の脱メタン化を支援する姿勢を示した。