上司と部下の1on1では、どんな話をすればいいのか。組織人事コンサルタントの世古詞一さんは「仕事の進捗状況を尋ねるのでは時間がもったいない。業務そのものの話ではなく、業務から何を感じ取っているかを聞き取ってほしい」という――。

※本稿は、世古詞一『マンガでよくわかる1on1大全』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

「情報交換」と「人間の対話」

組織におけるコミュニケーションは2つあります。

ひとつは、業務の話などの「情報交換」です。短い時間の中で成果を挙げていくためには、生産性を高めるしかありません。これにより、職場でのコミュニケーションは、目先の業務をいかに効率的に行っていくのかという話に焦点が当たるようになっています。

もうひとつは「人間の対話」です。人間の対話とは、個人の考えや気持ちに焦点を当てた対話のことです。その人にとっての意味、考え、想いについて話をしていくことです。

「最近仕事についてこう思っているんですよ」「将来的にはこういう方向に進みたいです」という対話を通して、自分なりの意味を創出することで、すべてが自分ごと化していきます。

では、具体的にはこの2つのコミュニケーションはどのように異なるのでしょうか?

1on1は上司が部下の業務の進捗を聞く場ではない

まず、業務に焦点を当てた情報交換では、いわゆる業務進捗の確認などをします。上司が、

「あの件はどう進んでいるの?」

世古詞一、英賀千尋『マンガでよくわかる1on1大全』(かんき出版)
世古詞一『マンガでよくわかる1on1大全』(かんき出版)

というように、業務の状況や「業務そのもの」の話をします。このとき上司は、相手を人間としてではなく、その情報を知る機能や役割、リソースとして見ています。

一方で、業務に関する人間の対話では、上司は、「あの件進めてて(あなたが)何か気になることはありますか?」というように、業務を通じて相手が考えていることや感じていることに焦点を当てます。

1on1では業務の話をもちろんしてよいのですが、上司が知りたい「業務そのもの」の話ではなく、部下が「業務を通じて」考えていることや感じていることを話す場だと思ってください。

そうすることで、業務と部下の考えや想いがつながってきて、発見があったり、やりがいや当事者意識が生まれてくるのです。