部下のやる気を引き出すために、上司はどんな声かけをすればいいのか。組織人事コンサルタントの世古詞一さんは「1on1の時間を効果的に使ってほしい。その際、『10点満点で今の自分は何点か』など、業務に関する感情を数値化する質問を織り交ぜるといい」という――。

※本稿は、世古詞一『マンガでよくわかる1on1大全』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

「ひとりで解決できる問題」と「解決できない問題」がある

1on1の場で話すテーマについて、1回の話し合いで終わるものもあれば、何度もじっくりと対話して取り組んでいくものもあります。その中でも私は、後者のテーマが1on1ならではのものだと考えます。なぜなら、1回の話し合いで完結する話、特に解決される「問題」については、現場でも話をしている事柄だからです。例えば、部下が解決するためのやり方を知らずに上司がアドバイスをして解決する類のことです。

このような問題を、 ハーバード・ケネディスクールのロナルド・ハイフェッツ上級講師はその著書『最難関のリーダーシップ』(英知出版)で、「技術的問題」と表現しました。技術的問題は今までの経験の活用、知識やスキルの習得で解決できるため、問題は自分の外にあります。

一方で、自分自身のものの見方や、周囲との関係性が変わらないと解決できない問題のことを「適応課題」と名づけました。たとえば、「将来キャリアを描くこと」や、「チームメンバーがモチベーション高く働くこと」など、自分の認知の仕方や、周囲との関係性が変化しないと新たな解が出てこないものです。

1on1で「すぐに解決する話」をするのは損

このような「適応課題」は、1回話し合っても、すぐに変化が起こるものではないかもしれません。何度か対話を行い、自分自身の物事への捉え方を自覚し、他の様々な捉え方の可能性を見いだせるようになってはじめて、自ら変わろうという認識に至るものです。

世古詞一『マンガでよくわかる1on1大全』(かんき出版)
世古詞一『マンガでよくわかる1on1大全』(かんき出版)

1on1で特に扱いたいのはこの適応課題です。まずは、ものの見方や関係性という、目には見えない事柄について極力言語化していきます。そうすることで、お互いにやっとその課題を取り扱えるようになるのです。

1on1では、すぐに問題解決を急がないという理由もここにあります。現場で起こる問題については、部下は足りない情報を上司から得て解決するような技術的問題が多いのです。しかし、1on1でじっくり話すテーマ、たとえばチームや組織に対する不満や問題意識、個人の成長や将来に関すること、業務においてやろうと思ってもできていないことなどは、その人の考え方や思い込みの部分に焦点を当てないと、解決に向かわないことが多いのです。

このような一度で終わらないようなテーマは、1on1の時間に扱うことが最適です。逆に、いつもすぐに解決する話ばかりをしている場合、テーマを見直してみてください。