「日本にいれば安全なのになぜウクライナに帰りたいの」

なかにはウクライナから出て海外に避難したものの、海外での生活に馴染めず、それがストレスになってパニックになってしまう人もいます。

戦争ということと比べられない、また別の大変さやストレスがあるのです。戦争が終わらないまま1年半も過ぎ、最近では、一時的に海外に避難していた人たちが、やはりウクライナの自分の家に帰りたいと思い、実際に帰国する人たちが増えていると聞きます。

私の友人家族もウクライナから日本に避難してきて、幸せな生活ができて良かった、と私も友人も最初は思っていました。

でもその後、彼女がじつは毎日泣いていることを知りました。別に旦那さんがウクライナに残ったわけではなく、娘さんもお母さんも一緒に日本に来ています。表面上は戦渦のウクライナから家族みんなで日本に避難できたラッキーなケースと言えるのです。

でも精神面では少し話が違ってきます。慣れない日本での生活にストレスを感じて、そのうち精神的に落ち着かない状況になってしまったウクライナ人は、この友人だけでなくたくさんいます。

私の友人も日に日にメンタルが不安定になっていきました。何度か彼女の気持ちを鎮めようと話をしましたが、「やっぱりウクライナに帰りたいの。帰らないと生きていけない」と言うばかり。そのうち彼女は「ウクライナに帰れないなら死にたい」と言い始めました。

私もつい感情的になって、

「あなたも、あなたの家族も日本にいれば安全なのに。なぜウクライナにそんなに帰りたいの⁉」と言い放ってしまいました。

戦争は祖国を愛する気持ちを格段に強くさせる

そのとき彼女の口から出た言葉は、

「祖国だからよ! それ以上の理由なんてない!」

その思いを聞いて、思わず、どっと涙があふれました。あとは2人で抱き合って泣くばかりでした。

どんなに爆撃の中で危険な状況だろうと、「生まれた国に帰りたい」という気持ちに、理由などないのです。

カテリーナ『ウクライナ女性の美しく前向きな生き方』(徳間書店)
カテリーナ『ウクライナ女性の美しく前向きな生き方』(徳間書店)

彼女はそれからすぐ、ウクライナに一時帰国しました。

ウクライナに帰ったところで、まだまだ危険は尽きません。

「昨日も、隣の家にまたミサイルが落ちた……怖い……今も震えが止まらない。でも、自分の家にいるから落ち着く」と彼女は話してくれました。

現在も彼女は日本とウクライナを行ったり来たりしています。彼女はウクライナに戻ったときには、物資を支援するボランティアとして活動しています。

ウクライナに戻って活動する人、海外から支援する人、まさに人それぞれですが、共通しているのは「ウクライナを愛する気持ち」です。

戦争で失ったものは数知れません。でも、戦争を通じて祖国を愛する気持ちは格段に強くなっていきました。

それこそが戦争のもつ皮肉なのだと痛感しています。

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