「何かあればシェルターに避難すればいい」という人も多い

戦争になってからウクライナの人たちの考え方は、それぞれ本当に違いがあります。危険だから子どもたちや自分の命を守るために国から出なきゃいけない、という考え方はもちろんありますが、そのためにはやはり避難するためのお金が必要になります。

国外に避難するためにはお金がないと移動できません。そのお金を工面できないのであれば、自分たちが住み慣れた場所にいて、本当に危険になったらシェルターに避難すればいい、という考えの人も多いです。

田舎の古くからあるほとんどの家やマンションの地下には、昔の戦争時代に作ったシェルターがあります。今回のロシアとの戦争が始まる前は、食糧を備蓄する冷蔵庫代わりに使用していましたが、現在は近所の人たちが自由に出入りできるシェルターとして使用されているのです。

やはり気持ちの上では、たとえ戦争の中でも自分の家族や好きな人と一緒にいたほうが心強いとウクライナの人たちは思っています。でも、日本にいる私から見ると、危険な地域からは今すぐにでも逃げられるなら逃げたほうがいいと思うので、私の気持ちも揺れ動くことが多いです。

「ウクライナから逃げたところで幸せになれるのか」

もう17年以上日本に住む私にとって、一番良いのは家族を日本に呼ぶことでした。2022年2月にロシアのウクライナ侵攻が起こり、最初こそ、戦争がここまで長引くとは思っていなかったので、「落ち着くまでの間だけでもいいから、日本に避難して。日本に来れば支援者もたくさんいるし、何とかなるから」と、何度も母や姉たち家族を説得し続けました。

カテリーナさんとお母さん
カテリーナさん(左)とカテリーナさんの母(出典=『ウクライナ女性の美しく前向きな生き方』)

とくにもう70歳になった年老いた母親のことが心配だったので、まずは母親を日本に呼ぼうと思いました。でも、母以外の姉家族は、今まで海外旅行に一度も行ったことのない人たちです。戦争が起きたという不安はもちろん持っていますが、

「ウクライナから逃げたところで、幸せになれる保証はあるの?」と言われ、

「でも、安全なのが一番でしょ」

と言う、私と家族で喧嘩になったことは何度もあります。

それだけでなく、「日本語もわからないし、仕事はどうするの? 住む場所は? 日本で食べるものは口に合うのかしら?」などと、避難した先でのさまざまな不安を思うと、

「戦争が怖い、ということだけ考えて生きたほうが、まだましじゃないか?」

と私の家族だけでなく、ウクライナの人たちの多くはそう思っているのです。

そのあたりが日本にいる私の考えとどうしてもズレてしまうのです。私がいくら、

「戦争中のウクライナより、海外にいたほうがとりあえず安心だし、平和に静かに暮らせる。落ち着くまではいろいろ大変だけれど、いろいろな国からの支援やサポートがあるので、ある程度、戦争が収まるまでの間だけ、慣れない土地での生活を我慢すればいいじゃない」

と言っても、ウクライナにずっと暮らしていた人たちにとっては、避難先で外国の言語ができないストレスは大きく、それ以上に文化の違い、生活リズムがすべて違う中での生活はしんどさのほうが大きいのです。