軽い鳥ほど標高の高いところにいく理由

次にこの標高による違いの背景にある条件を考えてみる。

すると、彼らの体重と標高に関係があることに気づく。海岸にいるカツオドリは1.5kgにもなる大きな鳥だ。アカオネッタイチョウは1kg弱、オナガミズナギドリは400g弱だ。コルを中心に分布していたシロハラミズナギドリは200gちょい、山頂のクロウミツバメは約50gだ。

川上和人『無人島、研究と冒険、半分半分。』(東京書籍)
川上和人『無人島、研究と冒険、半分半分。』(東京書籍)

つまり軽い鳥ほど高いところにいるのだ。これで第二段階が明らかになった。

そして、軽いほど標高の高いところにいくメカニズムを検討する。

大きな鳥と小さな鳥で喧嘩をすれば、もちろん大きい方が有利だ。海で食物を採る海鳥にとっては、海に近い場所の方が価値の高い繁殖地となるだろう。そんな場所をめぐって競争をすれば、大きな鳥が勝つはずだ。

一方で体重の軽い鳥にとっては、重力に逆らって標高の高い場所まで飛ぶこともそれほど大きな負担にはならない。海岸にこだわって大きな鳥と争うよりも、山頂方面に移動した方がコストが小さいのだろう。

南硫黄島だからこそわかったこと

また、カツオドリやアカオネッタイチョウは地上に巣を作るが、ミズナギドリやウミツバメは地面に穴を掘るため、土壌が必要である。海岸近くで土壌が十分にたまっている場所は少ない。地中営巣者にとっては、土壌の多い高標高地の方が繁殖しやすいという事情もありそうだ。

こう考えれば、体重によって繁殖する標高が異なることは合理的である。これで発見した事象の意味が理解できた。

人間が島に住み始めると、その影響で海鳥が絶滅していく。そうなると、どの標高でどの鳥が繁殖しているのが自然なのかという情報が得られなくなる。標高と海鳥の種類の関係は、南硫黄島だからこそわかったことの一つだ。

得られたデータやサンプルに基づいて、この島の自然の持つ意味を明らかにしていくことが、調査を終えた研究者の次なるミッションなのだ。

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