安全な調査のため、休息をとるのも仕事の一部
良い調査結果が得られて、とても満足だ。
だが、昼には鳥の調査をして夜にも鳥の調査をしていたら、寝る暇がなくなる。一晩中鳥を捕まえていたいが、明日からも安全に調査をするために休息をとるのも仕事の一部だ。
私たちは山頂に戻り、事前に用意しておいたツェルトの中に入る。ツェルトはペラペラのナイロンの生地でできた簡易版のテントのようなものだ。テントのように密閉されておらず隙間だらけだが、軽くてコンパクトなのでこのような調査にはもってこいである。
この島には完全に平らな場所がないため、ツェルトの底は傾いているが、野外調査で快適さを求める方が間違っている。
ツェルトの中に横たわると、体に海鳥の匂いが染み付いていることに気づく。海鳥の体は魚のような生臭い匂いを発しており、捕獲するとそれが手や服につくのだ。この匂いは多少手を拭いたくらいではなかなか落ちない。
うめき声と衝撃で目が覚める
とはいえ、すっかりかぎ慣れた匂いだ。
心地よい疲労の中、調査の興奮がおさまりまどろみが押し寄せる。
私はそのまま夢の世界に誘われた。が、その世界に突如魔物が襲いかかった!
「ウギャー!」
なにごとか⁉
うめき声と衝撃で目が覚める。
周りを飛び交うクロウミツバメが、ツェルトの隙間に突入し、そのまま私の顔にぶつかってきたのだ。動揺した私の口の中にパニックに陥ったクロウミツバメの足がはまり、お互いにびっくりしている。
しかし、勝手に入ってきて勝手にパニック状態になるとは実に勝手な話だ。とはいえ、我々が彼らの繁殖地に勝手に宿泊しているのもまあまあ勝手な話だ。
ここはお互い様ということで、我慢しよう。なんとか顔から鳥を引き剥がして、ツェルトの外に逃がす。
結局この夜は闖入者の定期的な来訪を受け入れることとなり、寝不足になったのは言うまでもない。