就労継続支援やグループホームにも広がる輪

福祉の側面を切り分けてより強化するため、06年に特定非営利活動法人「周南障害者・高齢者支援センター」を設立し、08年からはセンター内で就労継続支援A型事業所「よろこびの里(現・よろこび)」が稼働を開始した。障害を持つ「利用者=従業員」の一部は、カン喜の製造ラインで指導を受けながら働き、そのままカン喜に就職する者もいる。また、借り上げた農地があって、農作業の指導を受けられる。そこで収穫されたタマネギは、カン喜でグラタンソースの材料として使われている。

今年9月に入所したばかりの久保直也さんは「将来は農業関係の仕事につくことを希望していて、毎日の作業が楽しい」と話す。今年7月まで農作業の指導に携わってきた井上順平さんは、給与計算をはじめ管理の仕事に移ったものの、就労支援の“縁の下の力持ち”でいられることに誇りを感じている。このよろこびを加えると、カン喜グループ全体の従業員は140人になり、そのなかで障害者は74人を数える。つまり、障害者の雇用率は50%のラインを超えるわけだ。

そして、22年には定員10人のグループホーム「楽明館」が本社工場近くでオープンした。カン喜グループの正育者が親元を離れて自立生活をしていくための施設で、最終的には“終の棲家”にもなる。世話人の一部には、カン喜を定年退職した健常者がつく。「現在、8人が暮らしていますが、第2、第3の楽明館をつくっていきたい」と上坂社長は言う。これからも正育者と健常者の従業員が一体となって、カン喜グループの歴史を紡ぎ続けていくことだろう。

農業関係の仕事を目指す久保直也さん(左)と、グループホームの縁の下の力持ち的な存在である井上順平さん
撮影=熊谷武二
農業関係の仕事を目指す久保直也さん(左)と、グループホームの縁の下の力持ち的な存在である井上順平さん
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