カイロ国際見本市の日本館に出展した

日々のトラブルは相変わらず数えきれないほどあったが、エジプト味の素食品社は営業基盤を着々と拡大していった。

2月にカイロ市内のナイル川右岸のショブラ地区に最初のデポを開設し、5月に同南部のトゥーラ地区に2つめのデポも開設した。営業チームは、ドッキ本社に車両2チーム、バイク2人、ショブラに車両1チーム、バイク1人、トゥーラに車両1チームとなった。

3月6日には、1日の3グラム品の販売が10ケース(1ケースは5.4キログラム)を超え、過去最高を記録した。

3月19日――

カイロの東の郊外、ナスルシティにある見本市会場で10日間にわたるカイロ国際見本市が始まり、味の素は日本館に出展した。

ブースでは、味の素グループやキーメニューであるロッズの調理方法を紹介するパネルを展示し、島田やエジプト人社員たちが試食や販売を行なった。

フーテンの寅の格好をして啖呵売

最終日、宇治は、フーテンの寅の格好をして、啖呵売をやった。

「さあ、エジプトの皆さんこんにちは。ものの始まりが一ならば国の始まりが大和の国、島の始まりが淡路島なら泥棒の始まりが石川の五右衛門、ここに持ってきた味の素はただの白い粉じゃない、ジーちゃんもバーちゃんもみんなの料理を美味しくするものだ」

頭に鉢巻を締め、ダボシャツに首から下げたお守り、腹巻姿の宇治は、寅さんになりきって口上を述べる。

カイロ国際見本市でフーテンの寅の扮装で啖呵売をやる宇治弘晃氏
写真=宇治氏提供
カイロ国際見本市でフーテンの寅の扮装で啖呵売をやる宇治弘晃氏

後方のブースで、社員や臨時販売員のエジプト人女性らがせっせと味の素を販売する。

黒木亮『地球行商人 味の素グリーンベレー』(中央公論新社)
黒木亮『地球行商人 味の素グリーンベレー』(中央公論新社)

「角は一流デパートの黒木屋赤木屋白木屋で、紅おしろいつけたお姉ちゃんに下さい頂戴といっても50や100は下らない代物、今日はなんと、うま味調味料味の素、ハムシーン・グラム・タラータ・ギニー、ノッス・キロ・アシャラ・ギニー(50グラム3ポンド、半キロ10ポンド)」

数字のところだけアラビア語で、あとは日本語だ。

「さあほっかむりのお姉ちゃんも、オバQ目出し帽のおばちゃんも寄ってらっしゃい見てらっしゃい」

威勢のいい口上に、エジプト人たちがどっと集まり、味の素が飛ぶように売れた。

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