見学ではまず入り口の掲示物をチェック

プリスクールの見学で確かめたいのが、施設の概要を記した書類の掲示の有無とその内容です。私が記事にするのをやめた「X」でも、まず違和感をおぼえたのがここでした。

プリスクールの多くを含む認可外保育施設には、提供する保育内容の掲示、つまり施設の設置者や施設長の名前、年齢別の定員や料金、保育従事者の数や保育室の広さ、提携医療機関といった重要事項について掲示する義務があります。いちばん目に付きやすい正門あたりに掲示せよ、というのが東京都の指導で、多くの施設では雨に濡れても大丈夫なようにラミネート加工して、保護者の目に付きやすい場所に貼り出しています。正門のA4一枚程度の用紙を条例に基づき掲示しているか、いないか。経営者のコンプライアンスの意識が出るのです。

ところが「X」では、玄関の外にも内側にもそうした掲示は見あたりませんでした。この時点で行政の定めた基準や指導に従う意識が低い施設だということが分かるわけです。

基準って何? と思われるかもしれませんね。認可外保育施設にも、設備や運営に関して守るべきさまざまな決まり(「認可外保育施設指導監督基準」)が定められています。行政の立ち入り調査もあり、守っていなければ指導の対象にもなります。

認可外保育施設指導監督基準

幼稚園
写真=iStock.com/Edwin Tan
※写真はイメージです

安全について考慮されているか

玄関から「X」の中に入ると、そこには白を基調としたとてもシックな空間が広がっていました(子供を育てる環境としては色味が少なすぎるようにも思えましたが……)。ただ、入ってすぐのところに地下1階の保育室に下りていく階段があり、幼い子供たちが出入りの際に転がり落ちてしまわないか、危ないなぁと思ったものです。残念ながら、転落防止用の柵といったものは見当たりませんでした。これも国の「認可外保育施設指導監督基準」にある「乳幼児が出入りし、通行する場所に転落事故を防止する設備が設けられていること」に違反しています。

転落防止の柵の例
写真=iStock.com/Brett Holmes Photography
転落防止の柵の例(※写真はイメージです)

そもそも、地下に保育室があるということ自体、変わっています。普通は1階とか2階とか、とにかく日当たりのいいところにするでしょう? 先ほどの指導監督基準でも「保育室は、採光及び換気が確保されていること」と定められています。それを無視しているわけですから困ったものです。

保育施設の設備には、それ以外にも細かい基準がいろいろとあります。食事も遊びも同じ空間で行い、トイレトレーニングの終わっていない子もいる中で、子供たちの衛生と安全を守るために定められた決まりです。例えばトイレだけでなく保育室、または通路にも手洗い場を設けなければなりません。消化設備や避難のための階段や非常口、果てはカーテンの防炎処理についても規定があります。

ちなみに、手洗い場がしっかり設置されていたら、その近辺の床が濡れたままになっていないかも見てみてください。登園時、休憩時、外遊びから帰ってきた時も手洗いをするため、教室と洗面台の間はよく濡れます。生徒が滑って転ばないようにこまめに清掃できている園は、安全・衛生意識が高く、授業も質が高い傾向があります。

トイレは職員用と子供用が分けられているかも重要です。職員のプライバシーを守るとともに、性的虐待防止の意味でもトイレは分ける必要があります。