わかりやすい例を、もう1つあげましょう。高さ3メートルのところに、おいしそうな果物が実っていたとします。

分担作業をしているチームではお互いが自己完結で仕事をしているので、1人1人がそれぞれにジャンプして果物をもぎとろうとします。しかし、1人がどんなに高くジャンプしても3メートルの高さには手が届きません。分担作業では、1人1人が頑張っても越えられない壁があるのです。

では、高さ3メートルのところにある果物を、どうすれば手にできるのか。

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組織と個人の関係を考えてみる

答えは簡単です。何人かが集まって肩車をしたり、組体操の要領でピラミッドを組めばいいのです。1人1人の背は低くても、同じ目的に向かって有機的に協力しあえば、背の高い人が1人1人単独でジャンプするより、ずっと高みに到達できます。これこそがチームプレイの醍醐味といえます。

たとえば騎馬戦も同じです。全員が騎士役をやりたがると騎馬が成り立ちません。騎士役と馬役がそれぞれ同じ目的に向かって協力し合うからこそ、勝利に近づけます。

アイデアに関しても、同じことがいえます。あるニュースを聞いてひらめく人もいれば、無反応な人もいます。アイデアが生まれるかどうかは、個人の知識や経験しだい。これが個人で発想するときの限界です。

しかし、チームの場合は違います。チームで発想すれば、ブレーンストーミングに代表されるようにアイデアはどんどんと広がっていくのです。

個人でも、アイデアが次のアイデアを引き出すという現象を起こすことは可能です。しかし個人の場合、アイデアの生まれ方も単線的になりがちで、連鎖が途切れたらそこでおしまいです。一方、チームでのブレーンストーミングでは、アイデアが相乗的に増えていくため、その気になれば連鎖を無限に続けていくことができます。そこに個人で発想するときとの決定的な違いがあるのです。

『ビジネススキル・イノベーション』第2章 時間と感情のロスを減らす(プレジデント社刊)より

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