早期治療で「長く続く痛み」は予防できる
皮膚症状が治ると多くの場合は痛みも消えますが、神経の損傷によりその後も痛みが続くことがあり、これを「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼びます。PHNは帯状疱疹の合併症で、「焼けるような」「締め付けるような」持続性の痛みや、「ズキンズキンとする」痛みが特徴です。
50歳以上で帯状疱疹を発症した人のうち、約2割がPHNになるといわれています。PHNは、抗ウイルス薬で予防が可能です。皮疹出現後3日以内に投与することが望ましく、遅くとも5日以内に投与を開始し、早期に治療することが重要です。帯状疱疹の合併症としてはPHNが最も頻度が高いですが、発症部位によっては、角膜炎、顔面神経麻痺、難聴などが合併することもあります。
50歳以上はワクチン接種が推奨されている
冒頭でご説明したとおり、帯状疱疹の原因となるウイルスは水ぼうそうにかかったことがある人なら誰もが持っていますし、発症には免疫力の低下が大きく関わっているため、日頃から疲労やストレスをためないことが大切です。疲労や加齢以外では、悪性腫瘍、重症な感染症、放射線や紫外線の曝露、免疫抑制剤や抗がん剤使用などが免疫力低下を招く可能性があります。
過去に水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫を獲得していても、加齢とともに効果は弱まるため、帯状疱疹発症のリスクは高まります。特に発症率が増加する50歳以上の方はワクチン接種が推奨されています。ワクチン接種は帯状疱疹を完全に防ぐものではありませんが、たとえ発症しても症状が軽く済むこと、PHNへの有効性も88.8%〔シングリックス®(後述)でのデータ〕であり、高い有効性も証明されました(Cunningham AL, et al. :Efficacy of the Herpes Zoster Subunit Vaccine in Adults 70 Years of Age or Older, N Engl J Med. 2016 Sep;375(11):1019–1032.)。