2種類のワクチンがあり一長一短
ワクチンには、2016年に認可された「弱毒生水痘ワクチン」と、2020年に認可された「シングリックス®」の2種類があります。
「弱毒生水痘ワクチン」は、水痘・帯状疱疹ウイルスを弱らせ病原性をなくし、乾燥凍結させたもので、60歳以上で接種した場合、68%の予防効果がみられますが、8年目に32%まで低下します(Céline Boutr, et al : The Adjuvanted Recombinant Zoster Vaccine Confers Long-Term Protection Against Herpes Zoster: Interim Results of an Extension Study of the Pivotal Phase 3 Clinical Trials ZOE-50 and ZOE-70,Clinical Infectious Diseases, Volume 74, Issue 8, 15 April 2022)。接種回数は1回で、シングリックス®よりも安価(1回接種で約8000円)で受けることができます。副反応で注射部位の痛みや腫れや水痘症状が出ることがありますが、副作用は比較的少ないです。ただし、妊娠中の方や免疫抑制患者など、接種できない方もいます。
「シングリックス®」は、病原性をなくしウイルスの一部のみを使用した不活化ワクチンです。50歳以上で97.2%の予防効果があり、10年後も80%を超える長期予防効果が期待できます(GSKプレスリリース「GSK、50歳以上の成人を対象とした「シングリックス」の臨床試験で、少なくとも10年間の帯状疱疹に対する予防効果が示されたことを発表」2022年10月20日)。
ただし、弱毒生水痘ワクチンと異なり2回接種しなければならず、価格も高価(2回接種で約4万5000円)です。副反応は注射部位の痛みや腫れ、全身的な倦怠感、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱などがあり、弱毒生水痘ワクチンよりも強く現れる傾向があります。
発症率は10年で1割増加している
費用に関しては一部を助成する自治体も増えているので、接種を希望する方はお住まいの自治体ホームページなどを確認してみてください。
また、50歳以上に加え、2023年6月からは帯状疱疹にかかるリスクが高いと考えられる18歳以上で、病気や治療により免疫不全となった人や免疫機能の低下やその可能性がある人、医師が接種を必要と認めた人へと対象が拡大されました。
1997年から2006年にかけて行われた「帯状疱疹に関する大規模疫学調査(宮崎スタディ)」では、10年間で県内の患者4万8388人のデータを解析したところ、10年間の発症率の平均は1000人あたり4.15人でした。1997年と2006年の発症率平均を比較すると3.60と4.55で、この10年で約1割近くも増加していることがわかりました(国立感染症研究所「帯状疱疹大規模疫学調査『宮崎スタディ(1997-2017)』」2018年8月17日)。
発症のピークとなるのは50~80代ですが、年齢を問わず注意が必要になってきています。背景としては、ストレスによる免疫力の低下、水ぼうそうのワクチンが子どもへの定期接種になったことで流行が激減し、大人たちが水ぼうそうのウイルスに触れる機会が減り抵抗力が弱くなっている等が考えられます。