「サブスク」だからこそ導入できた仕掛け
2019年にトヨタが始めた、車のサブスクリプションサービス「KINTO」。このKINTOで、2023年1月から提供が開始された新型プリウスの契約が大きく伸びており、旧型と比較して約13倍もの申込者数となっている。この伸びは、新型プリウスという車の人気だけで生じたのではない。そこには車のサブスクならではの新たな仕掛けが導入されていた。KINTOで社長をつとめる小寺信也氏にお話を伺った。
サブスクリプションとは、製品やサービスの購入者に一括支払いを求めるのではなく、利用に応じて月々の定額料金での支払いなどを求めるという課金モデルである。日本の自動車メーカーのなかではトヨタが先陣を切り、2019年に車のサブスクリプションサービスとしてKINTOを開始する。
世界の自動車産業は現在、大変革期を迎えている。CASE(Connected,Autonomous,Shared,Electric)といわれるように、サブスクやシェアリングなどの新しい車の利用形態が広がっていくだけではなく、電動化、自動運転、ネット常時接続と、複数の変化が同時に進行している。そのなかにあって、KINTOは人と車の新しい関係をつくるというミッションのもとで設立され、着々と布石を重ねている。
2023年のKINTOの伸びを牽引するプリウス
KINTOがサービス提供を開始した2019年3月から、同年12月末までの累計申込者数は1200件ほどにすぎなかった。しかし、その後の3年を経て、2022年12月末には累計申込者数が5万5000件ほどまで増加する(図表1)。
拡大を続けてきたKINTOの申込者数だが、2023年に入っても、その勢いは衰えない。そこでの牽引役となっているのが、1月に発売された新型プリウスである。KINTOでは、新型プリウスの発売にともない開始した新サービスなどが好評で、旧型プリウスと比較して、新型プリウスの申込者数は13倍ほどに増加している(*注 KINTOにおける旧型プリウスのサービス終了前6カ月間と、新型発売後の6カ月間の申込者数の比較)。