車ならではのサブスクの価値を探求

近年、ビジネス用アプリやビデオ視聴などの領域でサブスクの導入が広がっている。とはいえ、自動車のサブスクであるトヨタのKINTOはAdobeやNetflixなどのやり方を、そのまま真似ればよいわけではない。サブスクと一口にいっても、そこには、企業がどのような利点を享受しようとしているか、顧客にどのような価値を提供しようとしているか、扱う財の特性はどのようなものかなどによって、さまざまなバリエーションが生じる。

アプリやコンテンツ配信などで活用されてきたサブスクの価値は、月額料金で気楽に契約を申し込み、いつでも解約できることや、一定の月額料金で見放題、読み放題となったりすることなどである。しかしこうした価値を、車のサブスクでそのまま活用することは難しい。途中解約を無条件に認めることは、運営会社のリスクが大きくなりすぎるし、次々と利用する車種を変えていくことは、マイカーへの愛着を育むことで生まれる車に乗る楽しみを損ねることになる。

【図表2】アップグレードとクルマの進化の概念図
「車のサブスク」ならではの価値の一つ、アップグレードとクルマの進化の概念図

そこでKINTOが追求するようになっていったのが、これらとは異なるサブスクの価値である。新型プリウスのUグレードなどでは、二次流通時の車の価値も考慮し、メンテナンスなどの高度化と効率化の両立を進めることによって、より安価な車の利用を実現している。

車離れに対するKINTOという解

振り返ると、長らく続いたデフレのなかにあって、自動車だけは価格の上昇が続いた。同じモデルの車でも、10年前、20年前と比べるとずいぶんと高価格になっている。

日本人の所得が伸び悩むなかで、車の価格だけが高くなっていけば、その所有をあきらめる人も増えていくのは当然だろう。若年層の車離れの背景のひとつにも、この高額化問題があると考えられる。

だが、環境対策や安全対策の進んだ現在の車は、かつてとはスペックが異なる。その本体価格を引き下げることには限界がある。KINTOは、そのなかにあって、サブスクリプションを活用した車の未来のひとつの新たな解を提示している。

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