社員が「働く喜び」を感じられるような環境をいかにしてつくるか。本書では、働く人が仕事や職場に求めているのは「公平感」「達成感」「連帯感」の3つだと述べている。この3つすべてを満たすことが、企業の長期的な繁栄に不可欠だというのだ。「達成感」や「公平感」はたしかに重要な要素である。特に報酬に関しては、社員全員ができるだけ公平に感じられる環境をつくることが、トップマネジメントに求められていることは間違いない。

『覇王の家』は、徳川家康の幼少期から天下を取るまでを描いた歴史小説。司馬遼太郎著/単行本初版1973年/新潮文庫
『熱狂する社員』は250万人への調査をもとに、「情熱はどこから生まれるのか」について分析。デビッド・シロタほか著、スカイライト コンサルティング訳/2006年/英治出版刊

だが、いちばん心配しているのは「連帯感」の不足である。仕事は1人ではできない。目標を共有して、そのゴールのために、それぞれが役割分担をする。そして、ひとたび問題が起きて、壁にぶち当たったときは、アイデアを出し合って解決策を見つける。こうした、頼ったり頼られたりしながら仕事を進めるスタイルが、職場から消えつつあるような気がしてならないのだ。

その原因のひとつはコミュニケーションの不足ではないだろうか。

2010年のサッカーのワールドカップでも、興味深い話を耳にした。練習試合では、思うように力を出し切れなかった日本代表チームだが、大会直前のスイス合宿を境に変わったという。開幕前までキャプテンを務めていた中澤佑二選手を中心に「お互いに、言いたいことを言い合うようにしよう」と話し合ったことで、意思疎通と役割分担がうまくいくようになったらしい。

その後の健闘ぶりを見ると、コミュニケーションはやはり重要だと痛感する。とはいえ、ドイツやスペインの選手と比べると、まだまだだと感じる面もあった。彼らは、スペースに入ると、必ず「こっち、こっち」と手をあげている。

「俺はここにいて、ちゃんと役割を果たしているんだから、パスをよこせ」と、声をかけ合っているのだ。