大和ハウス工業社長 大野直竹

1948年、愛知県生まれ。62歳。71年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、同社入社。93年特建事業部長、2000年取締役、02年常務、04年専務、07年副社長。4月より現職。


1.出身高校:私立東海高校
2.座右の書、好きな本:塩野七生『ローマ人の物語』
3.尊敬する歴史上の人物:ユリウス・カエサル
4.座右の銘、好きな言葉:錆付くより擦り切れる方がましだ
5.健康法・ストレス解消法:ジムで週1回のストレッチ

大野直竹は陽気だ。それもそのはず。大和ハウス工業では、ほとんど営業畑を歩いてきた。「住宅営業は厳しい仕事だと聞きます」と水を向けると、「乱暴に鍛えられたかもしれませんね。ただ入社2~3年で何でも任せてもらえる。こんなに面白い会社はないと思いました」という答えが返ってきた。

会長の樋口武男、副会長の村上健治のもと、専務や副社長として、7年間、営業本部で仕事をしてきた。目指すトップ像を「自分の長所を生かして、現場の中で判断できる社長になりたい」と描く。同社の支店は全国に80以上あるが、支店長クラスの顔と名前はすべてわかる。性格もある程度は把握している。

営業本部長時代には、「ソリューション型」の会議で現場を支えた。支店の問題は、会議ですべて吐き出させ、その場で解決する。支店だけで対処できない課題ならば、支店に代わり本社の関連部署へ連絡を取り、突破口を開いた。

国内の事業環境は厳しい。年間100万戸台という住宅着工戸数は、もはや帰らぬ夢である。大野自身も82万~83万戸を上限に、次第に減ると見ている。

ただ、同社の収益力は底堅い。2009年、住宅着工戸数が大幅に減少し、同年度にはライバルの積水ハウスが赤字に陥る中でも、黒字を維持してきた。屋台骨を支えたのは「多角化」である。

そのユニークなCMと相まって戸建て住宅のイメージが強いが、賃貸住宅や商業・事業施設などの事業も大きい。賃貸住宅は売り上げの29%、商業・事業施設は合計で27%(11年3月期)を占める。たとえば国道沿いに激増したユニクロの出店攻勢を支えたのも同社だった。

だが、さしもの大和ハウスも、ここ3年の業績はほぼ横ばいで、リーマンショック前には戻っていない。大野の役割は、再び成長軌道に乗せることだ。そのために既存事業のシェア向上、海外事業の加速、新規事業の立ち上げに取り組む。

シェア向上の余地はあると大野はいう。

「日本の住宅産業の特徴ですが、我々でも個人住宅のシェアは2.5%。全体のパイを云々するレベルではない」