「ヒトラーは民主的に選ばれた」に欠けている視点

小野寺拓也、田野大輔『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』(岩波ブックレット)
小野寺拓也、田野大輔『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』(岩波ブックレット)

以上の一連の過程を見ると、ヒトラーの権力掌握は民主主義の自己破壊を本質とするもので、民意を背景にそれを遂行したという意味では基本的に「民主的」と言うことができる。議会制民主主義の終焉を、ドイツ人の多数が望んでいたことは間違いない。

だがその一方で、56.1%の有権者がナチ党による一党独裁を望んではいなかったことも事実である。それが可能になったのは、憲法の制度上の脆弱性や物理的な暴力行使によってであった。政敵を暴力によって萎縮させ、弱体化させることで、ヴァイマール共和国の憲法秩序は完膚なきまでに破壊された。

「ヒトラーは民主的に選ばれた」という議論は、そうしたナチスの暴力性を覆い隠してしまうのである。

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