サウナでひらめいた新製品のアイデア

そんなある日のこと、中川さんは気分転換にサウナへ行った。もともとサウナは唯一の楽しみだった。全身の血が巡り、心身ともに「ととのう」ことで、爽快感に浸れるからだ。その日は、なぜかゴムの入ったボクサーパンツが気になった。「サウナ後に締めつけの強いパンツを履けば台無しになるじゃないか」

そして中川さんは、リラックスウエアとしての「ふんどし」製作のノウハウを活かし、締め付けないショートパンツをつくることを思いつく。ふんどしはハードルが高い。ならば受け入れられやすい形にすればどうだろう。コンセプトは「ノーパンで履けるショートパンツ」に決まった。

ふんどしの製法で心地よさを演出

「ふんどしの形態に固執する必要はない。今までとは違うものを開発しようと思い、できたのが『ととのうパンツ』です。男女を問わず、抵抗感なく履くことができます」

構造は立体の二重にし、外側は涼しい素材、インナーには肌なじみのよい素材を使用。インナーは、デリケートゾーンへの負担を軽減して心地よくするため、縫い目が真ん中にこないように設計するなど、ふんどしの製法を活用した。そして、キャッチフレーズは「#実はノーパンです」というインパクトのあるものにした。

ととのうパンツ
撮影=渡邉茂樹

売値は強気の1万3200円に

売り値は1万3200円で、強気の価格設定だ。普通のパンツに比べれば値段ははるかに高い。しかし、研究と創意工夫による機能性と健康効果、背景にあるストーリーの魅力などが、決断を後押しした。その結果は正解で、瞬く間に人気が広がっていった。「僕は震災で人生変わったのと、震災復興の狙いもあって、製造は福島のメーカーに委託しています。また、オンラインストアの発送は長野県の就労支援施設に依頼しています。関わる人が全員ハッピーになる循環をつくることを目指したいのです」