妻が渡してくれた30万円を元手に起業

ちょうどその頃、ステテコがブームになっていた。おしゃれな柄で商品化されたステテコは、従来のイメージが払拭され、ルームウエアとして男性だけでなく女性にも人気だった。

「ふんどしにも、このストーリーを当てはめられるかも。なによりも安眠できるし『自分をいたわる時間を創る』という価値も付ければ、究極のリラックスウエアになる」

中川さんは「ふんどしはビジネスになる」と直感した。しかし「ふんどしで起業する」なんて言おうものなら、誰もが反対するに違いない。ましてや妻にはなんと説明すれば。

驚くことに妻は「やってみたらいいんじゃない」と背中を押してくれた。中川さんは感謝した。当時は新婚で、起業の資金はまったくない状況。妻は引っ越し費用にためていた虎の子の30万円を手渡してくれた。そのうち20万円はオンラインショップ立ち上げに使った。

ジェンダーレスで使える「越中ふんどし」
撮影=渡邉茂樹

2月14日を「ふんどしの日」に制定

「ふんどしには中立的な立場で普及、啓蒙する協会がありませんでした。とにかく、ふんどしを世の中に広めようと思い「日本ふんどし協会」を設立。同時にふんどしという言葉をメディアに取り上げてもらうため、日本記念日協会に7万円(現在は1件・15万円)を払い『ふんどしの日』を登録。記念日は、語呂合わせで読める、2(ふん)月14(どし)日を『ふんどしの日』としました。バレンタインデーにぶつければ、ギャップが大きいし、変わり種としてメディアでも取り上げられるだろうという狙いもありました」

残りは3万円しかない。中川さんは、京都の老舗メーカーの社長に財政状況が苦しいことを正直に話し、ふんどしで新たな価値をつくりたいと訴えた。社長は中川さんのことを信用しバックアップすることを約束。こうして完成したのが、「越中ふんどし」タイプの「sharefun」だ。内側には肌あたりの良いガーゼ素材を使用し、縫い代の当たりをなくすよう工夫を凝らした。