炎天下での夏の甲子園が始まった。滝のような汗を流してプレーする選手の中には試合中に足がつるといった症状を起こすことがある。スポーツライターの酒井政人さんは「選手はもちろん過酷ですが、もっとリスクが高いのは審判員、チアガール、吹奏楽といった日陰のない場所に数時間いる人々です」という――。
甲子園球場
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暑さ対策しようと言いつつ、カンカン照りの中で試合

「夏の甲子園」(全国高校野球選手権)が始まった。テレビ画面に映し出される選手の顔には大粒の汗が光る。酷暑のなかでの熱闘甲子園。視聴者も球児たちのハツラツとした動きと一生懸命のプレー、それから彼らの涙に胸を熱くする。

春より夏の甲子園の方が、人気が高いのは、「暑さ」が関係しているかもしれない。キラキラ輝く水滴が、球児たちの“頑張っている感”をさらに引き立てているからだ。

そのせいか弁護士の橋下徹氏はフジテレビ系「めざまし8」で、こんな発言をして話題になった。

「高校球児にとって大切な大会だとは思いますが、日中のあの大会、暑さ対策しようと言いながら、日中さなかの試合を大々的に放送するのは、僕は考えないといけない。主催者に考えてもらいたい」

甲子園への切符をかけた石川県予選でも、同県の馳浩知事が「決勝戦の時間帯はおかしいと思います。全国における(厳しい)気象条件のなかで昼の12時30分のプレーボールというのは、私は健康の観点から配慮があっても良いという意味でおかしいと思います」と意見した。

このように一般視聴者からすれば夏の甲子園は「灼熱しゃくねつ」というイメージが強いが、実態はじゃっかん異なる部分もあるのをご存じだろうか。

甲子園のベンチ内はエアコンガンガン

全国高校野球選手権を高野連とともに主催する朝日新聞は積極的に報じているようには思えないが、甲子園球場のベンチは2列目のイス後方に冷房設備があり、常に冷風が噴き出ている。2014年からは臨時の「スポットクーラー」も設置。グラウンド内と比較してかなり涼しいのだ。

さらに近年は熱中症対策が進んでいる。「水分補給の徹底」はもちろん、日陰になるベンチ内ではアイスタオルや氷嚢などを使って、火照ったカラダを冷やすことも可能だ。今大会からは5回終了時に10分間の「クーリングタイム」も設けられた。