「所得が右肩上がりで増えた時代は、モノを買い続けることが消費の喜びでした。例えば自動車なら、小型自動車から始まり、高級車へ買い替えていくことに幸せを感じていたのです。しかし、最近は上流下流に限らず、消費をコストとして捉えて、自分の興味のあるモノ以外、とくにこだわりをもたない消費者が増えてきた。いわば『~が欲しい』から『そこそこでいい』への変化です。ファストファッションやファストフードは『そこそこでいい』の典型。ですが、価格だけでなく個性や面白みがプラスアルファされ始めた点が上流に支持されている理由。一方、下流は、ファストファッションやファストフードの価格帯よりももっと消費へのモチベーションが下がっているのでしょう。それがこの逆転現象を生んでいるのだと思います」

下流の貧困ぶりは資産額を見てもよくわかる。預貯金や土地不動産、株式、債券の保有額は、どの世代でも上流が圧倒的に多い(図11・12)。当然、全資産では、上流と下流にかなり大きな差がつくこととなる。ただ、同じ上流でも世代によってポートフォリオが異なり、30代上流は流動性資産の比率が高い。

「アメリカで1929年の世界恐慌を経験した世代は、その後の株式の保有率が著しく低かったという報告があります。上流でも40~50代の流動性資産比率が低いのは、就労後にバブル崩壊を直接体験したからでしょう」(森氏)