病気や介護以前の段階で、日常生活で身体上の困難を抱える高齢者が大幅に増えつつある。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さんは「90歳になっても介護いらず、杖いらず、病院いらず、元気いっぱい、自力で楽しく生きるために、今すぐ始めたほうがいいことがある」という──。(第1回/全2回)
※本稿は、鎌田實『介護の世話にならない 鎌田式「90歳の壁」を元気に乗り越える5つの極意』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
筋肉が減ると歩けなくなる
「筋活」とは筋肉を増やして、90歳になってもピンピン元気で歩けるようにする活動のこと。僕は「貯筋」という言い方をすることもあります。
「サルコペニア」という言葉があります。「サルコ」は筋肉、「ペニア」は減少という意味です。加齢などによって筋肉量がひどく減少し、身体機能が低下する病態です。「フレイル(虚弱)」や要介護状態にもつながるため、サルコペニアの予防が注目されています。
加齢や座っている時間が長いなどの不活発な生活、栄養不足などが、サルコペニアの原因で、ある統計によると、65歳以上の高齢者の6〜12%がサルコペニアであるとされています。
さらに、75歳以上になると急激に増え、80歳を過ぎると60%にも上るといわれています。
イスから片足で立ち上がれるか?
サルコペニアになると、歩くスピードが遅くなる、歩くときに杖が必要になる、といった症状が目立ってきます。
このようなロコモ(「ロコモティブ・シンドローム」の略:運動機能が衰えている状態)は、心肺機能を低下させ、全身の老化を進めて、要介護の原因になります。介護保険のお世話にならないためにも、筋活をしてサルコペニアの予防を心がけることが大事です。
イスから片足で立ち上がれるかどうかは、脚の筋力の衰えをチェックする簡単な方法の1つです。
高さ40cmくらいのイスに座り、片足で反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒キープできれば問題ありません。一方、できない人は、体のバランスを保つ筋力の低下が始まっている可能性があります。