また、お酒の飲み過ぎも脂肪肝の原因になります。厚生労働省は「アルコールをどれだけ飲むか」で、脂肪肝を「アルコール性脂肪肝」と「非アルコール性脂肪肝」に分け、そのうえで「多量飲酒」を問題視しています。多量飲酒とは「一日平均60g以上のアルコールを飲むこと」。60gは、日本酒なら3合ぐらいです。

これはお酒に含まれる糖質の問題ではありません。アルコールの問題です。お酒を飲みすぎていると脂肪肝が生じていき、それが正常な肝臓の細胞の働きに影響して肝機能を衰えさせることになります。

本当にこわいのは「炎症」が起きること

脂肪肝になっても、その脂肪自体に毒性があるわけではありません。問題は、脂肪肝に「炎症」が起こることがある点です。

脂肪はそもそも安全な物質です。内臓脂肪などの脂肪も化学的な反応さえしなければ、本来は安全なものです。安全だからこそ、余分なエネルギーを脂肪の形でためておくようにと、人間の体はつくられているのでしょう。

脂肪が問題視されることになったのは、限度を超えてためすぎるようになったから。ためすぎた脂肪が炎症を起こして血管壁にへばりつき、悪さをすることで、さまざまな病気を引き起こしているからです。

そして、肝臓についた脂肪もまた、炎症が起きることで問題を起こします。ためこんだ脂肪肝に炎症が起きると、肝臓だけでなく全身の健康が損なわれて、重大な病気になることがあるのです。

肝臓
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危険な脂肪肝かどうか専門医でも分からない

脂肪肝になっても、その脂肪がおとなしくしていて、炎症を起こさず、なんの問題のない人もいます。ですから、脂肪肝になりそうな人や、なってしまった人のすべてが、深刻な病気になるわけではありません。

かなりの肥満で脂肪肝がたっぷりあるのに、そのまま病気が進まない人がいます。これは「単純性脂肪肝」と呼ばれます。逆に、それほど太っておらず、脂肪肝も少しある程度なのに、肝臓が炎症を起こして「肝硬変」にまで進んでいる人がいます。

つまり、脂肪がたくさんたまっていてもそれほど心配しなくてもいい人と、そんなにたまっていないのに炎症を起こして肝炎になる人がいるということです。

しかも、自分の脂肪肝が進行するタイプなのかそうでないのか、それを知る手立ては今のところありません。あなた自身はもちろん、医師でも分からないのです。専門医も頭を悩ませる現象です。

今、専門家の間で注目されているのが、NASH(ナッシュ)という「非アルコール性の脂肪肝炎」で、お酒を飲まない人の脂肪肝です。

NASHになるのは脂肪肝の人の約1~2割です。とはいえ、そもそも脂肪肝の人の数が膨大ですから、たった1~2割でもかなりの人数になります。そして、あなたの脂肪肝がNASHになるのか、ならないのか。どちらのタイプなのか簡単に判断する検査もまだありません。