お酒を飲まない人、閉経後の女性も要注意

NASH(非アルコール性脂肪肝)になるのは、若い人では男性が多く、高齢者では女性が多くなります。女性は、特に閉経後にNASHになる人が増えます。これは、女性ホルモンのエストロゲンの変化が影響していると思われます。

エストロゲンには、体内の炎症を起こりにくくしたり、内臓脂肪がたまりにくくしたり、筋肉をある程度維持したりと、いい作用がたくさんあります。それが閉経とともに全部なくなってしまうわけです。そのため高齢女性は、炎症を伴うNASHになるリスクが高まるといわれています。NASHの人の脂肪肝に炎症が起これば、肝臓がんになったり、肝臓以外のがんになったりします。

NASHの人は、たいてい内臓脂肪も増えすぎになっています。更年期や閉経後に急に太った女性は要注意です。思い当たる人は検診を受けましょう。

脂肪肝から脂肪肝炎、肝硬変、肝臓がんに…

「肝臓がん」と聞くと深刻な印象を受けますが、「脂肪肝」と聞いてもそれほど心配する必要はなさそうだ、などと思っていませんか。とんでもありません。確かに、脂肪肝だけでは命に関わることはありません。しかし、脂肪肝が進むと、「脂肪肝炎」になる危険があります。

「脂肪肝」と「脂肪肝炎」は、たった1字しか違いませんが、その恐ろしさのレベルが違います。脂肪肝炎は、脂肪肝が原因で、肝臓に炎症などの異常事態が起きる病気です。脂肪肝から脂肪肝炎へ、脂肪肝炎から肝硬変や肝臓がんへと、命を落とすこともある病気へ進んでいく可能性があることを知ってください。

健康診断シート
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

また、脂肪のたまった肝細胞は、本来の働きが鈍くなります。また、脂肪に乗っ取られたようになった肝細胞が、風船のように膨らむこともあります。どちらも非常によくない状態です。脂肪肝は、ほうっておくと肝臓の機能を鈍くし、下手をすると炎症を起こして、命にかかわる病気に変貌を遂げる可能性があります。

ここで問題になるのは、内臓脂肪です。内臓脂肪はただ内臓に脂肪がくっついているだけではありません。内臓脂肪はいろいろな炎症性の物質を放出します。炎症が慢性的に続くと、がんにもなりやすくなります。

脂肪肝の脂肪も内臓脂肪と同じような性質をもっています。つまり、炎症を起こし、その炎症がいろいろなところに悪さをするのです。もちろん肝臓そのものにも悪影響があります。

脂肪肝は生活習慣病、特に「メタボの人」は要注意

このように、脂肪肝の脂肪も含め、内臓脂肪は体内の炎症を誘発します。そして、普段から「食べすぎ」で「運動不足」の人は、たいてい内臓脂肪をたくさん蓄えています。さらに、「脂質異常」「高血糖」「高血圧」のうち2つ以上に該当しています。いわゆる「メタボリックシンドローム(メタボ)」です。

脂肪肝になりやすいタイプのひとつは、間違いなく「メタボの人」です。脂肪肝の主な原因は「食べすぎ」と「運動不足」だといわれています。メタボの定義になる脂質異常症も、糖尿病も、高血圧症も、すべて「生活習慣病」です。脂肪肝も「生活習慣病」のひとつといえます。