なぜ肝臓に脂肪がたまることが問題なのでしょうか。ウエストサイズが心配? いいえ、肝臓に脂肪がたまっても、洋服がきつくなるようなことは起きません。肝臓に脂肪がたまることで生じるのは、全身の健康の問題、そして、命に関わる問題です。

脂肪肝は一般的な健康診断の血液検査ではわかりません。脂肪肝を見つけるもっとも早い方法は、人間ドックの超音波検査(エコー検査)です。ただ、人間ドックは必ずしも皆が受ける検査ではありません。

脂肪肝の原因は、お酒、高脂肪・高カロリーの食事、運動不足などです。そして、脂肪肝には、今はまだ「即効性があって完璧に治る薬」がありません。我々専門家が試行錯誤しながら治療法を探しているところです。

自覚症状はない。一般的な健診ではわからない。次の段階に進む前に見つけることが難しい。治療法も治療薬もまだない。それが脂肪肝という病気です。だからこそ、「脂肪肝にならないこと」「なってしまったら、軽症のうちに改善させること」が大切なのです。

トンカツの脂身を切り落としても効果は薄い

病名に「脂肪」が入っていることから、脂肪肝の原因を「肉の脂肪や食用油の摂りすぎ」だと思っている人が多いようです。

そんな人は、「トンカツは大きな脂身を切り落としたうえで、揚げずに焼く」「パンにはバターは控えてジャムを塗る」など、食事で摂る油脂を控えていれば脂肪肝の予防や改善につながると思いがちです。

でも、残念ながら、それは間違いです。肝臓に入ってくる脂肪のうち、いちばん多いのは皮下脂肪や内臓脂肪などから溶け出した脂肪で、60%ぐらいを占めています。それから、肝臓の中で糖質を材料に新たに合成された脂肪が25%ぐらい。

食事で摂る脂肪の占める割合は、実は大したことはありません。

トンカツ
写真=iStock.com/KPS
※写真はイメージです

それから、糖質も脂肪肝の原因になることも、あまり知られていません。

糖質は、果物やケーキにはもちろん、ご飯やパン、多くのお酒にも含まれています。糖質にもいろいろありますが、体の中に摂り込まれると、ブドウ糖という形に変わって体内の細胞に摂り込まれます。ブドウ糖は、肝臓の代謝機能によってグリコーゲンという物質に作り替えられ、肝臓と筋肉に貯蔵されます。

困ったことに、肝臓はそれほど多くのグリコーゲンを蓄えておくことができません。そこで、肝臓は多すぎるグリコーゲンを「中性脂肪」に作り替えます。

食事で油をあまり摂らなくても、糖質をたくさん摂っている人が太る(=脂肪が増える)のはそのためです。脂肪は血液に乗って体中をめぐるのと同時に、肝臓にもしっかり居座って、肝細胞一つひとつにたまっていき、それが脂肪肝になっていきます。