各国の航空会社が、事業戦略の抜本的な転換に乗り出している。コロナからの景気回復が進み、旅行需要が盛り返しているにもかかわらず、なぜ戦略を大きく変える必要があるのだろうか。その理由は、コロナをきっかけに人々のライフスタイルが変わり、出張を含めた旅行の在り方も大きく変化しているからである。コロナ期間中に一部の識者が指摘していた社会の不可逆的変化が進んでいる。
航空会社世界最大手の米アメリカン航空は、これまで同社のドル箱であった「企業との包括契約」の見直しを進めている。出張するビジネスパーソンは、お金の出所が会社の経費であることに加え、価格よりも日程を優先する傾向が強く、航空会社にとっては最も「おいしい」顧客であった。ところがコロナ禍以降、利用者の飛行機の使い方が激変し、各社を困惑させている。
コロナ前の時代であれば、ビジネス客とレジャー客は明確に区別できた。出張の場合、週末には自宅に戻る必要があるため、休日をまたいだ往復にはなりにくい。日本に当てはめれば、木曜日に羽田をたち、札幌に1泊した後、金曜日に羽田に戻るといったパターンである。ところがコロナ禍をきっかけにこのパターンに当てはまらない乗客が増え、コロナが終息しても、その傾向が続いている。
従来の常識では行動が読めない旅行者たち
コロナ禍以後は、同じ木曜出発でも、帰りが日曜だったり、週明けの月曜になるケースも多いという。従来区分では週末を利用したレジャー客に見えるが、観光地ではない場所でも同様の日程が見られるので、そのカテゴリーには当てはまらない。2週間程度、特定の都市に滞在し、戻ってくるという旅行客も増えているとされるが、これも従来の常識では何をしているのかよく分からない。
旅行業界ではこうした旅行客の新しい行動様式について、ビジネスとレジャーの混在型と分析している。混在型と説明されてしまうと、本当にそんな旅行をする人が大勢いるのかと疑ってしまうが、こう考えれば分かりやすいだろう。
例えば週末に遠隔地で友人の結婚式があった場合、これまでなら金曜の夜、あるいは土曜の午前にたって、日曜に戻っていただろう。だが今はリモートでも仕事ができるので、家族と一緒に木曜の夜にたち、金曜日はホテルでリモートワークすればよい。夜には現地で家族と食事を楽しみ、週末に結婚式に出るといったスケジュールである。