親と子供は別の人間
また、ホリーの母親自身が、バスケットボール選手として優秀であることにばかりこだわってきたことを認めることも必要です。それができることで、どれほどティナをひいきしてホリーをないがしろにしてきたのか、もっと敏感に感じ取れるようになるでしょう。
とはいえ、当然のことながら、こうしたステップを踏んでいくのはきわめて困難です。
親にとってとりわけ大変なのは、子供は自分とは別の人間で、備えている特徴も才能も全く違うのだということを忘れないようにすることです。それができれば、子供が自分らしさを大切にすることに喜びを感じられるようになるでしょう。
親の失敗を見て子供は成長していく
それでも有り難いことに、子育てには失敗の余地があります。イギリスの有名な精神分析家のドナルド・ウィニコットが述べているところによると、「共感の失敗」という、親が意図しない失敗から子供は成長できるのです。
親の欠点や失敗するところを見て、子供は親の力を借りなくても問題を解決できるようになっていきます。自分の能力を頼りにするようになり、そこから自立心が芽生えます。
たとえば、青年期の子供は、自分のパフォーマンスにいろいろと口を出してくる父親が、実はあれこれコーチしていけるほどの専門知識がないことに気づくということがあります。これは父子にとって残念なことでしょうが、大切なのは選手本人が大人に向けて成長していくことです。
父親からのサポートが続くとしても、息子は別のコーチの指導を受けて前進していこうとします。
ホリーの母親も、自分の欠点や失敗をホリーに見せることから心がけていけば良いのです。