母親からの容赦ない檄が長女を襲う
母親は、ホリーが時間をかけて成長していくことに望みを託し、何とか上達させようとたびたび厳しく接します。
自分が高校時代、バスケットボール選手としてとても充実した貴重な経験をしてきたことが記憶に強く刻まれているだけに、ホリーに対する期待も大きくなり、必要以上に追い込んでしまっています。
それがかえって災いして2人の間にはひずみが生じていきます。練習中、母親は容赦なく怒鳴りつけます。「何やってんの、ホリー。もっと足を動かして」。
ホリーは母親から檄を飛ばされるのは嫌ではなかったものの、のびのびとプレーすることができませんでした。しょっちゅうつまずいたり、バランスを崩したり、下手をすれば、ボールを受けたときにトラベリングを犯してしまうこともありました。
ホリーはミスをするたびに、人目ばかり気にするようになりました。
「母親は妹の活躍ぶりばかりに目を向けているのでは…」
そのうち妹のティナが同じチームでプレーするようになり、たちまちスター選手として活躍し始めます。練習や試合のことで、ティナと母親は、一緒に過ごす時間が増えていきました。それに伴って、ホリーはひとりで過ごすことが多くなりました。しかも夕食では、もっぱらティナの上達ぶりやそのすばらしいプレーの話題ばかりが持ち上がります。
「ティナの出したあのパス、ちゃんと見せたかったわ。ティナの歳を知らなかったら、高校生がやってるプレーだって、きっと勘違いしてたもの」
ホリーは気持ちを腐らせず、妹の活躍ぶりを喜んでやりたいと思いつつも、自分の存在は母親の目に入っていないのではないかと不安になっていきます。それから数カ月のうちにホリーの学校の成績が落ちて、両親は問題が起きていることに気づきます。
ホリーの母親は、どうすればいいのでしょう。ホリーにもう一度バスケットボールを頑張ってみるように勧めて、親子の共通点を増やしたほうがいいのでしょうか。ホリーに嫌な思いをさせないように、ティナが見事なプレーを見せてもあまり騒ぎ立てないようにするべきなのでしょうか。