超名門ワセダ競走部が世間に頭を下げてかき集めたお金
早稲田大学競走部が今年に入り、駅伝強化プロジェクトのためのクラウドファンディングを実施し、2000万円以上の金額を集めたことがスポーツ界で注目を浴びている。
早大競走部はREADYFORに「名門復活。箱根の頂点へ。そして世界へ。」というメッセージを掲載。一口5000円の「お気持ち応援コース」から、100万円の「早稲田大学競走部プラチナサポーターコース」まで8つのコースを設定すると、649人から2025万円を獲得したのだ(募集終了3月31日)。目標(500万円)の4倍以上の金額を調達したことになる。
10%ほどの手数料と返礼品(※)の送付などがあるため、すべての金額を使えるわけではないが、同部にとっては大きな強化費をゲットしたことになる。
※返礼は御礼メール、ニュースレター配信、箱根駅伝用オリジナルウエア、監督と選手からオフラインで直接ご報告・懇親会、練習見学会へのご招待など、コースによる
だが、日本の私学の雄として君臨する早稲田大学の体育会が、なぜわざわざ世間に頭を下げて寄付を募っているのか。
1914年に創部した早大競走部は箱根駅伝で13度の総合優勝した名門。瀬古利彦、渡辺康幸、竹澤健介、大迫傑ら日本長距離界のスーパースターを輩出してきた。とりわけ東京五輪で6位入賞を果たした大迫が大学1年時の2010年度には「駅伝3冠」(出雲、全日本、箱根)に輝いたが、その後はタイトルに届いていない。
2022年の箱根駅伝では13位に沈み、シード落ちも経験。しかし、同年6月に2度の五輪を経験している花田勝彦駅伝監督が就任すると、11月の全日本大学駅伝で6位、2023年の箱根駅伝で6位に入るなど、復活の兆しを見せていた。
輝かしい歴史を誇る同部だが、他の駅伝強豪校と比べると、決して“恵まれた環境”が整備されているわけではない。
長距離を本格強化している他の大学の場合、スポーツ推薦が10枠ほどあるのに対して、早大は長距離だけで3枠ほどしかない。他に自己推薦、指定校推薦、一般入試などを経て入部してくるが、現在の長距離部員は35人ほど。他の強豪校は50~80人なので、人数も半数ほどになる。
必ずしもトップ人材が豊富とはいえない早大は資金面でも潤沢ではない。そのことが今回のクラファン募集で表面化したといえる。
早大は大学本体としてクラウドファンディング事業者のREADYFORと業務提携を締結。その理由を大学側は、「大学の外部資金を獲得する必要性が年々高まってきている中、その有効な手段としてクラウドファンディングを活用し、各研究室の活動や大学の設備投資、学生の活動支援などに対する寄付金などを獲得する機会が広がる」と説明している。
大学が支援する対象は多方面に広がっているため、体育会関係だけを優遇するわけにはいかないということだろうか。近年、早大競走部が苦戦していたのはこうした“お金”の問題が一因だったのかもしれない。
他の強豪校と比べて、早大はスポーツ推薦枠が極端に少ないだけでなく、授業料免除なども基本的にはない。花田監督も現役時代はいくつもの奨学金を利用して、なんとか学生生活を送っていた。それでも花田監督をはじめ、渡辺康幸、竹澤健介は学生時代から海外遠征をしているが、それらの資金は瀬古氏が監督を務めていたエスビー食品(3人とも卒業後はエスビー食品に進んだ)や、瀬古氏のポケットマネーなどから賄われていたのだ。大学からの強化費は当時からシビアだったわけだ。