箱根駅伝の強豪校は1億円を超える予算も

早大が競走部にどれほどの強化費を出しているかは非公開だが、長距離を本格強化している大学のなかでかなり低いほうだと考えていいだろう。

筆者が関係者を取材した範囲では、大学から割り当てられる年間予算は数千万円というところが多い。なかには1億円を超える大学もあるようだ。

では、巨額な予算を何に使うのか。寮費を別とすれば、まずは合宿費が大きい。強豪校は年間でトータル50日以上の合宿を実施している。部員50人のチームが1泊8000円(3食付)×50日、プラスして移動費を考えると、年間の合宿費だけで2000万円近くかかる(※部員がいくらか負担している大学もある)。

他にも遠征費(7月には北海道のトラックレース、2~3月には地方のロードレースに参加する大学が多い)、トレーニング費用(マシンや治療器具の購入など)、治療費(選手が通う鍼灸しんきゅう院への支払い)、人件費(コーチ、外部トレーナー、管理栄養士など)などが必要になってくる。

大学から割り当てられる予算だけでなく、宗教系の大学の場合は寄付金が多く集められたり、他の大学では契約しているスポーツメーカーから数千万円のサポートを受けたりするケースもある。また、最近はユニフォームに社名などを掲載するスポンサーを募集して資金集めする大学もある。これらのトータルが部の運営費となるわけで、監督の“指導力”だけでチームは強くならない。

箱根駅伝で最多14度の優勝を誇る中央大学も2010年代は低迷。箱根駅伝の連続シードが28で途切れると、予選会敗退も経験した。しかし、2016年に藤原正和駅伝監督が就任して、すぐにスカウティングの改善に乗り出した。有力選手を獲得できるように大学へ支援を仰いだのだ。藤原監督の指導で選手たちは変わり始めて、徐々に有力選手も集まり出す。そして今年2023年の箱根駅伝では2位に大躍進した。復活のきっかけとなったスカウティングにはそれなりのコストをかけたはずだ。

駅伝出場大学
撮影=プレジデントオンライン編集部

箱根駅伝にコンスタントに出場している、もしくは出場射程圏内の大学は学内に400mのオールウエザートラックを持っており、寮内に高酸素ルームと低酸素ルームを完備しているチームもある。またケニア人留学生を入学させるのも費用がかかる。どこに予算をかけるかは各大学によって異なるが、強くなるために“お金”は欠かせない。

そして近年は有力選手の獲得では“マネーゲーム”がエスカレートしている。早大は前述したとおり、スポーツ推薦枠が少なく、授業料免除も基本的にはない。しかし、早大以外では授業料免除の選手を10人近くもスポーツ推薦で獲得している大学もある。

高校トップクラスの選手になると、授業料免除は当たり前で+αが必要になってくる場合が多い。具体的にいうと、寮費、食事代、合宿代をチームが負担。さらに返済不要の奨学金を用意しているチームもある。

早大はそのブランド的な知名度をもつがゆえにそうした特別な特典がなくてもトップレベルが入学しているが、箱根駅伝の出場校全体を見ると“条件格差”が顕著になっている。