箱根駅伝の結果は志願者数につながるのか
1990年代前半、箱根駅伝で旋風を巻き起こした山梨学院大学が知名度を上げるとともに、偏差値も上昇したことがニュースになったが、箱根駅伝の活躍が必ずしも即志願者数の増加につながるわけではない。とはいえ、正月のテレビ視聴率25%以上を誇る箱根駅伝で上位に食い込み、露出が増えればその大学のPRに大きく役立つことは間違いない。
リクルートが運営するスタディサプリが調査した「大学 ブランドランキング」2022年最新版の結果は以下の通り。
「関東『志願したい大学』ランキング」
①早稲田大 ②明治大 ③青山学院大 ④立教大 ⑤慶應義塾大 ⑥中央大 ⑦日本大 ⑧法政大 ⑨千葉大 ⑩上智大 ⑪東洋大 ⑫東京理科大 ⑬筑波大 ⑭神奈川大 ⑭横浜国立大 ⑯東京都立大 ⑰北里大 ⑰埼玉大 ⑲帝京大 ⑲東京大
「関東『知っている』ランキング」
①早稲田大 ②明治大 ③青山学院大 ④慶應義塾大 ⑤東京大 ⑥日本大 ⑦立教大 ⑧上智大 ⑨法政大 ⑩中央大 ⑪駒澤大 ⑫学習院大学 ⑬順天堂大 ⑭一橋大 ⑮お茶の水女子大 ⑯帝京大 ⑰東京理科大 ⑱東洋大 ⑲千葉大 ⑲日本体育大
2つのランキングを見ても、箱根駅伝でおなじみといえる大学が半数以上を占めている。
もっとも早大、明大、青学大、立大、法大、中大などは箱根駅伝の活躍がなかったとして、有名私大としての歴史があり十分なブランド力がある。そのため早大だけでなく、法大などの駅伝強化費も多くない。
反対に山梨学院大、中央学大、城西大、東京国際大など新興大学は箱根駅伝で「名前」を売った大学といえるだろう。そのため、巨額な予算をかけてでも箱根駅伝で“ブランドイメージ”を上げ、学生というお客さんを呼び込みたいという大学は少なくない。
とはいえ今後、いわゆる「Fランク大学」(ボーダーフリー大学)がゼロから長距離を強化して、箱根駅伝で知名度を上げ、偏差値も高めようと画策しようとしてもうまくいくかは不透明だ。
何しろ競走部を立ち上げるだけでもグラウンド、選手寮などの施設には多額の予算が必要で、キャリアのある指導者、優秀な選手をそろえるのにもお金がかかる。それだけの準備をしたうえで、毎年1億円近い予算をつぎ込まないと、箱根駅伝には出場できないからだ。それだけ潤沢な資金を用意するには、ある程度、生徒数が多い大学でないと賄えない。
18歳人口は1992年の205万人をピークに下がり続けており、2023年は112万人。近い将来、100万人を割る時代に突入していく。4年制大学の進学率(1992年は26.4%、2022年は56.6%)は上がっているとはいえ、大学は生き残りに必死な時代になっている。
定員割れが続いていた女子大の恵泉女学園大は今春、2024年度以降の学生募集停止を発表した。私大の半数近くが定員割れになっており、今後、同じようなケースが出てくる可能性は高い。
現状、定員割れまではしていなくても箱根駅伝出場校も経済的にゆとりのある環境にない大学は多く、競走部は資金援助を期待できない。そこで、冒頭で触れた早大がプライドを捨てて、クラファンで強化費を調達する戦略に出た。古豪がファーストペンギンとなって結果を残せば、今後、他大もこれに追随し……いずれ箱根駅伝の勢力図が変わっていくかもしれない。