※本稿は、池上彰『新聞は考える武器になる 池上流新聞の読み方』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
朝日新聞は「理科の勉強が楽しいのに成績は低下」
同じデータを基にしても、新聞社によってトーンの違う記事になることは、よくあるものです。でも、これだけくっきりと違いが出るのは、ちょっと珍しいかも知れません。
2020年12月9日付の朝日新聞朝刊は1面で、数学・理科の国際調査の結果を報じています。記事の見出しは、〈小4「理科楽しい」 でも平均点は低下〉というものでした。本文を読んでみましょう。
勉強が楽しければ成績も上がるはずなのに、そうはなっていない。これは不思議です。これについて文部科学省は「様々な要因があり、中長期的な分析が必要」と説明しているそうですが、本文で理科教育の専門家は「小4の得点が下がった理由ははっきりしない。小中の指導の連携を強め、注視していく必要がある」とコメントしています。
日経新聞は国際平均と比較して「学習意欲が低下」
これだけを見ると、日本の子どもたちの学力は大丈夫かと不安になります。同日付の日経新聞はどうか。こちらの見出しは、〈小中の理科 順位下げる 学習意欲の低下なお課題〉とあります。
朝日の記事では小4の学習意欲が高まっていると書いてあるのに、日経では低下しているという。日経の記事本文を読んでみましょう。