65歳以上は前期高齢者、75歳以上は後期高齢者と呼ばれる。医師の和田秀樹さんは「こうした年齢の区分は意味がない。年齢を気にしすぎる『年齢呪縛』に捕まってしまうと、年上というだけで相手に威張り、マウントをとる老害の人になってしまう」という――。

※本稿は、和田秀樹『心が老いない生き方』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。

夫は妻を責める
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自分より年上の元気な人とつき合おう

「自分より高齢の人から若さをわけてもらった」

そう言った70代の女性がいます。

「若い人とつき合うと、たしかに華やいだ気分になるけど、どうしても自分の老いを意識してしまう。でもわたしよりずっと年上なのに元気な人とつき合うと自分の歳を忘れてしまう」

この感覚はわかります。

たぶん70歳を過ぎたくらいの人でしたら、同じような経験があると思います。

趣味や勉強のサークルなんかでも、そこに自分より若い人が多いと「ついていけるかな」と不安になりますが、はるかに年上の人が混じっていると安心するし勇気づけられます。

「マイペースでやっていこう。2年間のコースに5年かかってもいいんだから」

そう考えれば気持ちに余裕が生まれてきます。

自分よりはるかに年齢が上の人と一緒だと、自分がまるで子どもみたいに感じるから、かえって力みとか気負いがなくなって楽になれることが多いのです。

「まだ若い」と励まされると勇気が出る

ましてその年長者が元気な人、若々しい人でしたら「わたしなんかまだ若い」という気分になります。

あなたが自分の夢や計画を話すと「まだ若いんだからやってみなさい」と応援し、「いまは何でも便利になっているから大丈夫だよ」と励ましてくれます。

「もう少し若かったらわたしもやりたかったな」と羨ましがってさえくれます。こうなるとあなたも勇気が出てきます。「そうだな、わたしなんかまだ70過ぎたばかりじゃないか」と自分を励ますことだってできるのです。

そして感じるのは、自分より高齢でも若々しい人たちに共通する心の自由さです。

わたしが精神分析を学んだ土居健郎先生は89歳で亡くなりましたが、晩年になっても学会の権威や定説を批判し、「評価なんて死んでから定まるんだ」と批判を恐れず自分の研究を続けていました。

わたしが尊敬している養老孟司先生にしても、85歳を過ぎてなお昆虫採集に少年のような情熱を傾けていますし、世の中の権威や常識に真っ向から異を唱える心の自由さを失っていません。そういう元気な先輩と向き合うと、自分の心も若さを取り戻すことができるのです。