業者が営業電話をかけてくる理由

会社員時代、職場にマンション投資の営業電話がやたらと来ていた。あれは間違いなく、社員名簿を手に入れた業者がいたのだ。そこそこ給料が高く、見栄っ張りも多い広告代理店の社員名簿は、マンション投資関連業者からすれば宝の山だったことだろう。会社名も年収も大体把握されているだけに「お客さまほどの収入がある、ステータスの高い方はぜひ、このマンションを!」「放置しておくだけで家賃収入ガッポガッポですよ!」などと、甘言をチラつかせていた。

私のような若手(27歳で会社は辞めた)には営業電話は来なかったが、ある程度の年次を重ねた先輩にはこの手の電話が頻繁にかかってきていた。実際に買った人がいたのかどうかは知らないが、業者が性懲りもなく電話営業をかけまくる理由は、基本的には「【1】とにかく電話件数の最低ノルマがある」「【2】成約数に応じたインセンティブがある」ということだ。

笑みを浮かべて電話をかけている男性
写真=iStock.com/yamasan
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通販も同様だ。広告を見て一度でも発注してしまうと、後日「先だっては鰻の詰め合わせをご購入いただき、ありがとうございます! 今日は別のお得な商品をご案内させてください!」なんて調子で、シャトーブリアン(最上級の牛ヒレ肉)だの、カニだの、次々に売り込みをかけてくる。こちらが「いらない」と返せば、「あの鰻もまだキャンペーン中です!」と前回買ったものを再び売り込む。すべては自分自身の成績のためである。

「声かけ」する側は、こちらの都合なんて考えない

ぼったくり居酒屋の客引きもそうだし、この手の電話営業マンも然りだが、彼らは日々の生活のため、どうにかしてカモを捕まえたくて仕方がないのだ。そのカモがサービスや商品に満足するかはさておき、刹那的に客を「ATM」扱いして、なんとしても自身にとってメリットがある方向に誘導しようとする。

もっと言うと、銀行など金融機関も同じである。ある程度まとまった額の貯金があると、やたらと営業電話をかけてくる。「REIT(不動産投資信託)を買いませんか?」「外貨建ての投資信託、非常にオススメです」「資産を普通預金に置いておくだけなんて、もったいないですよ!」などとあおり立て、「すぐにでもお宅へうかがいます!」「いつでも構いません。なんなら、今日これからでも」なんて畳みかけてくる。さらに「今日こそ絶対に契約を決めなくては!」といった勝負日となれば、「上司も連れていきます!」と気合いを入れてくる。こちらが首を縦に振らなくても、上司の前で「頑張っているオレ」をアピールできればよいのだ。そのプレイに付き合わされる高額預金者の都合なんて、考えてもいない。