アメリカの次はヨーロッパに進出した。73年、醤油というものを知ってもらうために、旧西ドイツのデュッセルドルフに鉄板焼きのレストランをつくった。鉄板焼きなら醤油の使い方を目の前でデモンストレーションできるし、お客と直接会話もできる。さらに、ヨーロッパ各国の料理学校と契約し、その国の料理に醤油を使ったレシピを開発した。
しかし、ヨーロッパ人の食文化は保守的で、なかなか新しいものには飛びつかない。迅速に展開できたアメリカと違い、ヨーロッパは浸透に時間がかかった。販売会社をつくったのは79年だが、十数年かかって、ようやく売り上げが伸びてきた。オランダにヨーロッパ初の工場を建設した97年以降は、年平均2ケタの伸び率を見せている。現在、海外で挙げる営業利益の8割はアメリカだが、今後しばらく、成長力についてはヨーロッパが牽引役となるだろう。
もともと読書は好きで、昔はいろいろな本を読んだが、近年は時間が取れず、じっくり読めるのは海外出張の飛行機の中くらい。そこで11年前から、20代後半から30代の優秀な若手社員を年に8人選び、定期的に「読書会」を開いている。8人に、ベストセラーを含めて毎月4冊ずつ本を読ませ、読書会ではそのうちの4人が一冊ずつ内容を発表し、皆で議論する。僕はこれで月4冊、本を読んだことになり、今何が話題になっているかもわかる。若手社員にとっても勉強になるし、経営者である僕と直接対話することもできる。一挙両得だ。
1年経って読書会が終わったあとも、若手には「本を読めよ」と言っている。1年間に約50冊という読書会のペースを維持してほしい。『現代の経営』は、繰り返し読めば読むほど味が出てきて、経験を積むほどわかってくるようになった。若い頃には理解できないところもあったが、わからないなりに面白くて、こういうものを勉強したいと強く思わせる何かがそこにはあった。
同書と出合ったからこそ僕はアメリカ留学を決意し、その経験は大きな財産となった。とりわけ、アメリカ・ヨーロッパ市場で、ドラッカーのいう「顧客の創造」を実践し、大きな成功を収めることができた。
僕の人生に一番インパクトを与えた一冊といえば、この本をおいてほかにはない。
茂木友三郎氏厳選!部課長が読むべき本
『日本人として知っておきたい近代史(明治篇)』中西輝政著、PHP新書
「人間が歴史を動かす主人公である」という視点で、吉田松陰、岩倉具視、乃木希典など、明治を築き上げた7人の人物を中心に取り上げ、新しい「近代史の常識」と「この国の自画像」を提示した本。今日の日本を知るうえで、近代史を中心に人間を学び直すべきという中西氏の主張に強く共感した。
『考え抜く社員を増やせ!─変化に追われるリーダーのための本』
柴田昌治著、日本経済新聞出版社
変化の激しい時代を生き残るために、行動しながら自分の頭で考え抜き、臨機応変に対応できる力を養う方法を紹介する。
『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝』
レイ・A・クロック、ロバート・アンダーソン著、プレジデント社
※すべて雑誌掲載当時