いま大学で「USBメモリ詐欺」という詐欺の手口が広がっている。経済アナリストの森永康平さんは「金額はだいたい50万円程度。『このUSBメモリをパソコンに挿して、取引をするだけで確実に儲かる』という触れ込みでダマされてしまう。この手口が恐ろしいのは、金銭的な損失だけでなく、周囲の信頼も失ってしまうことだ」という――。(第2回)

※本稿は、森永康平『森永先生、僕らが強く賢く生きるためのお金の知識を教えてください!』(アルク)の一部を再編集したものです。

パソコンにUSBメモリを挿す人の手元
写真=iStock.com/show999
なぜ大学生が「50万円のUSBメモリ」に飛びつくのか(※写真はイメージです)

売買を繰り返させることで証券会社が儲かる

金融機関と聞くと、悪い印象を持っている人も日本人にはいる気がしますが、その印象はどこから来るのでしょうか?

一番分かりやすい例は証券会社かもしれません。

証券会社は顧客が取引をするたびに手数料を得ます。そこで、顧客に対して、何度も取引を繰り返すよう仕向ける行為がかつては横行していました。

たとえば、営業員がレポートを片手に訪問してきて、「このAという会社はこれから成長しますよ」と営業したとします。

そこで、Aの株を買ったところ、数カ月してまた営業員がレポートを片手に訪問してきて、「先日ご紹介したAという会社は相変わらず素晴らしいのですが、このBという会社のほうが成長しそうです」と提案します。顧客はその提案を受けて、Aの株を売り、Bの株を買うことになります。

このように売買を繰り返させることで、証券会社が儲かるのです。

「金融機関は悪い奴らだ」という話を聞く

もちろん、営業員の提案通りに取引したからといって、確実に儲かるわけではありません。

しかし、取引をすれば証券会社は確実に儲かります。

このような取引を繰り返させることを「回転売買」といいます。

かつてこうした取引の被害にあった人から、「金融機関は悪い奴らだ」という話を聞くため、なんとなく悪い印象を抱くようになるのでしょう。

ちなみに、最近はネット証券が一般的になっていますので、営業員が自宅を訪問してくることも少なくなりました。また、そもそも売買手数料も安くなっています。

いまの証券会社は、「回転売買」よりも、できるだけ多くの投資家の利益になる金融商品を売るほうに舵を切っています。