なぜ「無謀な速度違反」がなくならないのか
4月13日、下記のニュースが報じられました。
『9歳の女の子が死亡 一般道を速度100キロ超で走行か… スポーツカーの医師(36)を危険運転致死傷の疑いで書類送検』(RCC中国放送)
事故が起こったのは2022年6月18日午後8時すぎ。広島県福山市の交差点で、医師の男性(当時36)が運転するフェラーリと、交差点を右折してきた対向の軽乗用車が衝突。軽乗用車に乗っていた女児(当時9)が車外に放出されて死亡、運転していた女児の祖父と近くを歩いていた男性が重傷を負うという痛ましいものでした。
事故直後のTVニュースで激しく損傷した白いフェラーリの映像が映し出されたとき、「高速道路でもないのに、いったいどんな走り方をすればここまで車がつぶれるんだろう……」と感じたことを鮮明に記憶しています。
その後、防犯カメラやドライブレコーダーを検証した結果、医師の男性は一般道にもかかわらず、時速100キロ以上の高速度で走行していたことが明らかになりました。
「危険運転致死傷罪」の高すぎるハードル
記事によると、警察は、男性医師が「進行を制御することが困難な高速度で車を走行させ、軽乗用車の右折を妨害する目的で交差点に進入して事故を起こした疑いがある」とし、事故から10カ月後、医師の男性を危険運転致死傷の疑いで書類送検したというのです。
しかし、危険運転致死傷罪で送検されたからといって、検察官が同罪で起訴するとは限りません。
「令和4年版 犯罪白書」によると、危険運転致死傷罪の起訴率(令和3年)は年間の総数479件に対して起訴率は77.8%(339件)でした。つまり、警察が危険運転致死傷罪で送検しても、検察は4~5件に1件、同罪での起訴を見送っていることになります。
また、危険運転致死傷罪で起訴されたとしても、裁判官が判決で「(危険運転には当たらず)過失」と判断するケースも十分にあり得るのです。
ここ数年、同様の事故を取材してきましたが、法定速度の2倍、3倍という超高速度で走行中に死亡事故を起こしても、単なる「過失」(つまり不注意)と見なされることに、遺族からは数多くの疑問の声が上がっています。
この問題を野放しにしたままでいいのでしょうか。