法務省「速度のみをもってこの要件に該当するというものでもない」

速度超過による事故の問題については、国会でも何度か取り上げられています。しかし、現状はすぐに改善しそうにはありません。

昨年10月28日、衆議院内閣委員会では、緒方林太郎衆議院議員が、大分で起こった194キロ死亡事故を引き合いに出し、法務省にこう質問しました。

「一般道で、超高速運転する行為というのは、危険運転致死罪の『その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為』の構成要件に当たらないのか? どんなにスピードを出していても、前を正視してハンドルをきちんと握っていれば危険運転に当たらないと、そういうことなんでしょうか?」

これに対して、法務副大臣の門山宏哲氏は、「あくまでも一般論として」という前提で次のように答弁しました。

「『進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為』とは、速度が速すぎるため、道路の状況に応じて進行することが困難な状況で、自車を走行させるということを意味しているところでございますが、この要件に該当するか否かにつきましては、個別の事案ごとに証拠によって認められる事実、例えば、車両の構造性能、具体的な道路の状況、すなわち、カーブ、道幅など諸般の事情を総合的に考慮して判断されるものと承知しております。したがいまして、進行方向を正視してハンドルをきちっと握っていた、それだからと言って、およそこの要件に該当しないというわけではない、一方、運転する自動車の速度のみをもってこの要件に該当するというものでもない、そのように認識しております」

*筆者注:上記国会中継については、「衆議院インターネット審議中継」のサイト(発言者/緒方林太郎議員をクリック)から視聴できます。

時速194キロの乗用車に衝突された車。運転していた男性は死亡した。
写真=遺族提供
時速194キロのBMWに衝突され大破した被害車両。シートベルトは衝突の衝撃を受けてちぎれ、運転していた被害者は車外に放出された。

BMW、ベンツなら速度超過は許されるのか…

このときの副大臣の答弁の中に、気になる文言がありました。それは「車両の構造性能」という言葉です。例えば、直進安定性の高い高性能のスポーツカーが、直線道路をまっすぐに走行していれば、かなりの高速度であっても「危険運転」とはみなされない可能性がある、ということになるのでしょうか。

ちなみに、本稿で取り上げた超高速度による5つの重大事故のうち、3件は、フェラーリ、BMW、ベンツが加害車両でした。いずれもスピードメーターは250キロ以上刻まれている欧州製の高級輸入車で、その速度でも十分に走行できるポテンシャルを備えています。

死亡した被害男性が運転していた乗用車。衝撃の大きさがわかる。
写真=遺族提供
エアバッグが展開した被害車両。フロント周りは原形をとどめておらず、その痕跡は高速度による衝撃の大きさを物語っている。

しかし、どれだけ「車両の構造性能」が高くても、日本の狭い一般道を制限速度の2倍も3倍も出して走る行為は、「危険」ではないのでしょうか。