全国的に脂肪分の摂取量が増えている

脂肪分に富んだ食生活を送っているのは沖縄県民だけかというと、必ずしもそうではありません。厚生労働省が提案した「健康日本21」では、脂肪エネルギー比率の増加に伴い動脈硬化性心疾患の発症率や乳がん、大腸がんによる死亡率の増加が認められており、20~40歳代では脂肪エネルギー比率を25%以下にすることが望ましいとされています。

佐藤隆一郎『健康寿命をのばす食べ物の科学』(ちくま新書)
佐藤隆一郎『健康寿命をのばす食べ物の科学』(ちくま新書)

また「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、20~30%程度という目標値を定めています。2018年の日本国民の健康・栄養調査結果を見ると沖縄県と同様の傾向が見えてきます。図の上段には男性、下段には女性の年齢別の総数の分布を示し、脂肪エネルギー比率が30%以上の割合を示してあります。

男性の場合、食事由来のエネルギーの30%以上を脂肪から摂っている人の割合は35.3%で、およそ3人に1人となります。特に20歳代では53.1%と半数以上にのぼり、年齢が上がるにつれてこの割合は減っていきます。

同様の傾向は女性でも見られ、食事由来のエネルギーの30%以上を脂肪から摂っている人の割合は42.8%と、男性より7.5ポイントも高い数字です。さらに驚くべきことに、どの年齢層でも女性の脂肪エネルギー比率は男性のそれを上回っています。

なぜやせ型なのに脂肪肝になる人がいるのか

女性の場合、20~59歳の年代でほぼ半数かそれ以上の人が30%を超えています。つまり、女性はスリム志向のもとでダイエットをして食事量は減らしているものの、カロリーの多くは脂質から摂っているということです。人間ドックで低体重のやせ型体型の女性も脂肪肝の疑いありと診断されることは、この事実を物語っています。

日本は世界有数の長寿国であり、ユネスコ無形文化遺産にも登録された和食を中心とした低カロリーの日本食・日本型食生活は健康食として礼賛らいさんされる傾向があります。しかし現実の日本人の食生活を分析すると、低カロリーではあるものの脂肪エネルギー比率が高いという傾向が見えてきます。

現代を生きる私たちは日々の食事にもう少し気を配り、自らの健康維持に努めるべく、健康食=日本型食生活を見直し、継承していく必要があります。

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